内容説明
出版革命期を迎えた現代に、言葉を正し整えるという校正の仕事はどうあるべきか。出版史と実務経験から解き明かす包括的校正論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜長月🌙@5/19文学フリマQ38
78
校正者は言葉の声を聴く。言葉と対話しなければ校正はできません。言葉自体は生あるものであり、言葉をより生き生きとあるべき姿にするのが校正者です。言葉を一つの言葉として読むのではなく作品全体の中に息づくものとして読むことが大切です。精神論と共に実務としての校正も分析しています。「校正=品質管理」論です。あらゆる製品には品質管理が必要です。校正を重視しなくては品質低下をまねき、結局本の価値が下がるのです。品質は100点であることが基準であるだけに厳しいものです。2023/02/01
ネギっ子gen
56
【積極的に主体性をもって受け身となって言葉に寄り添い、受け身であることを言葉の理解のために、よろこびとも武器ともする】「並いる作家や編集者から絶大な信頼を受け、話題作を支えてきた」を煽り文句に、本年1月放映された『プロフェッショナル 仕事の流儀』が話題を読んだ校正者の本。「書物復権」フェアで多くの読書リクエストを得たことで、装いも新たに増補改訂版に。誰もが情報発信できる時代に求められる校正の方法論を、出版史を紐解きながら、現場で得た経験則とともに解き明かす。巻末に「Q&A」と「注」に「参考文献リスト」。⇒2023/07/12
pirokichi
22
NHKプロフェッショナル仕事の流儀「縁の下の幸福論~校正者・大西寿男」を視聴した。気の遠くなるような言葉の海に分け入り、誠実に言葉に向き合い、真摯に仕事に取り組む大西さん。その姿勢にとても感銘を受け本書を手にした。校正の仕事・原則・役割・歴史・将来について等、とても丁寧に綴られている。「正しい言葉が見えにくく、言葉の伝わりにくさに息苦しさを感じるいま、言葉が満たされ成就することをめざす校正の態度や考え方は、とても有効ではないかと思います」。校正者Q&A、巻末注も読みごたえがあり、おもしろくありがたい。2023/01/31
ねむ
19
校正者の矜持を語った書というか、言葉と真剣に向き合う人ならおそらく誰もが感じたことのある思いを丁寧に言葉にされていて、さすがだなと思った。言葉が人を許しもすれば凶器にもなること、どんな言葉もその裏ですくい取りきれず消えて行った数々の想念に支えられていること、間違いを正すだけでなく言葉が場面場面でもっとも本領を発揮できるような形に整えるエンパワメントとしての校正の役割など、文章の上ではもちろん日常でも肝に銘じておきたい名言がたっぷり。あくまで校正者としてのスタンスが主題なので実技的なことは含まれていません。2023/03/21
spatz
12
校正のプロによる本。言葉を扱う仕事をしている方に、どんな言葉で表していいのか畏敬の念を覚える。校正者の仕事を門外漢にもわかりやすくさまざまな角度から述べる。校正の仕事をする人へ、したい人へのメッセージでもある。しかし、これはへたな小説(pardon)よりずっと面白い読み物でもある。くりだされる比喩の滑らかさ、校正者とはその全人格と経験と感覚その他をもって真摯に仕事にあたる人。本や言葉に感心のあるすべての人におすすめ。言葉にならなぬほどたくさんのものがつまっている、本好きなら必ず読むべき書ではとすら思う。 2021/06/25