マルクス主義、フェミニズム、セックスワーク論 - 搾取と暴力に抗うために

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マルクス主義、フェミニズム、セックスワーク論 - 搾取と暴力に抗うために

  • ISBN:9784766427349

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内容説明

いまよみがえる、マルクス主義×フェミニズム

「日常化した女性差別へ抗う理論を必要とする人たちへ。
日本における売買春廃止論(アボリショニズム)の決定版の書!」(藤田孝典)
▼広がった格差の中で女性への差別と暴力を構造的にとらえながら、ネオリベラリズムがもたらした女性搾取のための詭弁「セックスワーク論」を正面から批判し、資本主義と男性支配という現代の二つの支配的な社会システムの悪辣さを白日のもとにさらす。

「本書はきわめて論争的な内容となっている。マルクス主義もフェミニズムも無数の論争を通じて自己を鍛えていった。両者をテーマとする本書が論争的でないわけがない。本書の立場に対立する人々、とりわけセックスワーク論を信奉する人々にとっては、本書は唾棄すべきものでしかないだろう。(中略)多くの敵対的諸関係に引き裂かれたこの社会において、誰かの憎悪と攻撃を受けることなくして、論争的テーマで何か意味のあることを語ることはできない」(「序文」より)

目次

序文
第Ⅰ部 再生産、平等、性暴力
第一章 マルクス主義フェミニズムと社会的再生産理論
 1 フェミニズムの歴史的流れの概観
 2 家事労働論争から社会的再生産理論へ
 3 社会的再生産理論(SRT)――その意義と限界
 おわりに
 補遺
第二章 日本国憲法と平等権――フェミニズムから読み解く戦後平等権論争
 1 戦後憲法学と平等権
 2 憲法一四条一項の意味Ⅰ――「平等」とは何か
 3 憲法一四条一項の意味Ⅱ――具体的な条文解釈
 4 一四条一項の解釈をめぐる種々の論点Ⅰ――「立法者拘束説」と「非拘束説」
 5 一四条一項の解釈をめぐる種々の論点Ⅱ――金城清子氏の提起をめぐって
 6 一四条一項の解釈をめぐる種々の論点Ⅲ――平等権は「empty」な権利か? 
 7 一四条一項の解釈をめぐる種々の論点Ⅳ――憲法の私人間効力
 おわりに――平等論の可能性
第三章 戦時の性暴力、平時の性暴力――「女性に対する暴力」の二〇世紀
 はじめに
 1 戦時における性暴力と日本軍「慰安婦」問題
 2 平時における「女性に対する暴力」Ⅰ――ドメスティック・バイオレンス
 3 平時における「女性に対する暴力」Ⅱ――レイプ、売買春、ポルノ
 4 正当化イデオロギーの構造的相似性
 おわりに
第Ⅱ部 売買春、ポルノ、セックスワーク論
第四章 売買春とセックスワーク論――新しいアボリショニズムをめざして
 1 売買春をめぐる世界の状況
 2 セックスワーク論とは何か、なぜそれはリベラル派を乗っ取ったか
 3 セックスワーク論に対する批判Ⅰ――人権論からの原理的批判
 4 セックスワーク論に対する批判Ⅱ――その正当化論に対する論理的批判
 5 北欧モデルにもとづく新しいアボリショニズムに向けて
第五章 ポルノ被害と新しい法的戦略の可能性
 1 「わいせつ/表現」から「差別/実践」へ
 2 マッキノン=ドウォーキン条例の五類型から新しい五大分類へ
 3 最初のポルノ被害――制作被害
 4 ポルノの流通被害
 5 ポルノの消費被害
 6 ポルノの社会的被害
 7 最後のポルノ被害――存在被害
 8 新しい法的戦略の可能性
 補遺 
第六章 マルクス主義と売買春――セックスワーク論はなぜ間違いか
 Ⅰ マルクス主義と売買春
   1 マルクスとエンゲルス
   2 第二インターナショナルの理論家
   3 第三インターナショナルの理論家
   4 戦後におけるマルクス主義の転換
 Ⅱ セックスワーク論はなぜ間違いか
    1 セックスワーク論と全面的非犯罪化論の主張
    2 北欧モデルに対するセックスワーク派の批判
    3 なぜセックスワーク論と包括的非犯罪化論が世界中に広まったのか
あとがき
事項・人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

katoyann

22
セックス・ワーク擁護論やポルノグラフィの問題点について論じた本。売買春の容認は家父長制社会における女性の従属の容認とイコールであるという議論は刺激的である。売買春の廃絶を訴える論文であり、ポルノグラフィも規制すべきという立場をとる。論旨も根拠も明快だが、同じ立場になれるかと問われると、私自身は曖昧な立場になる。2023/06/29

kenitirokikuti

7
ポルノ・売春問題研究会(APP研)のひと。マッキノンの批判ポルノ分類5種を拡張したの作ってるが、hentai的なアニメ・漫画絵が公共の場に掲げてあると、それを見て加害される環境ポルノとしている。やっぱこいつらか。日本はポルノ大国で、porunohabの検索ワードの上位にJapaneseやhentaiがある、と言っている。セックスワーク論など資本家の懐柔策であり、反対派の切り崩しでしかない。あと、商品ポルノが悪なのではなく、家父長制下のセックスは女を抑圧している、といった勢い。2021/07/17

Kaoru

3
屡々話題に上る、ポルノや性風俗産業について、もやもやしたものが晴れるような感覚だった。ここまで言い切ってくれると、思考したり論じたりする助けになるため有難い。自分はどちらの立場であろうか、と考え直すことができた。ポスターやポルノなどが性的搾取にもなりうると発言する方が、過激なフェミニストだと糾弾される場面をSNSで数度見掛けたが、データや実際の性犯罪者の発言を見ると、また見え方が変わってくる。2023/10/22

TNdler

2
セックスワーク論に興味があってSWASHの『セックスワーク・スタディーズ: 当事者視点で考える性と労働』を読んだところ、セックスワーカーの自己決定権を前面に押し出している一方で買春者と風俗事業者が不可視にされているようなモヤモヤがあったのでこの本を読んでみたら、痛快な程の反論があったのでとても興味深かった。第二章の日本国憲法の平等権解釈の部分は私に法律的な知識が足りないので難しかったが、他の章、特に第四章 売買春とセックスワーク論と第五章 ポルノ被害と新しい法的戦略の可能性は女性なら必読だと思う。2022/07/12

たろーたん

1
セックスワークとポルノの章が白眉と聞いたので、そこを読む。セックスワークの法体系について、現在では、①売り手の女性を非犯罪化して、保護支援の対象とし、他方で売春者、業者を処罰する「北欧モデル」と、②全てを非犯罪化する「包括的非犯罪化モデル」がある。そして、リベラリズムから②の方を推す国が多いが、筆者は①を推している。以前あったすべてを禁止する場合は、搾取されている女性も犯罪者になるため通報できないし、女性自身も犯罪者としてスティグマ化してしまうから論外として、非犯罪化に関しても著者は認めていない。(続)2023/04/19

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