扶桑社BOOKS新書<br> 日本人が知らない「スーホの白い馬」の真実

個数:1
紙書籍版価格
¥1,100
  • 電子書籍
  • Reader

扶桑社BOOKS新書
日本人が知らない「スーホの白い馬」の真実

  • 著者名:ミンガド・ボラグ
  • 価格 ¥1,100(本体¥1,000)
  • 扶桑社(2021/05発売)
  • ポイント 10pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784594087951

ファイル: /

内容説明

モンゴル人が知らない“モンゴルの民話が
長年、日本人に親しまれてきたことは
モンゴル人の私にとって驚きである。 楊海英(静岡大学教授)

社会主義イデオロギーのもとで量産された
階級闘争的な「革命物語」はいかにして日本に浸透したのか?
2016年刊『スーホの白い馬の真実 ─モンゴル・中国・日本それぞれの姿』(風響社/第41回日本児童文学学会奨励賞を受賞)の加筆・新書化企画。
民話「スーホの白い馬」は、小学生の国語の時間(光村図書出版・小学校国語教科書「こくご」二・下1965年度版 初掲載)、あるいは、絵本『スーホの白い馬』(福音館書店1967年初版2016年10月発行)により、日本では子どもから大人まで広く知られている、モンゴルの少年と白い馬の伝説である。
少年が可愛がっていた馬が王様に殺され、その馬の骨で作ったという馬頭琴という楽器の物語を読み、遠い国に思いを馳せる子供たちはいまも多い。
ところが昨今、日本と関わる機会が増えたモンゴル人たちが気づいたところによると、「これはモンゴルの民話ではない」という。
内モンゴル出身の著者は、丹念にこの日本語訳者や出版社に取材し、物語が出来上がった経緯とともに中国のつくり話であったことを解明していく。

折しも2020年6月、中国政府が突然、秋の新学期から学校におけるモンゴル語教育を停止するという文書を自治区に届けたことで、モンゴル人による抗議活動が全世界に拡散している。民族固有の言語や文化を封じる同化政策はこれまでチベット、ウイグルなどに対し行ってきたことと同様である。
昨今、日本にまで影響を及ぼす黄砂も、遊牧による内蒙古の著しい砂漠化が理由とされるが、実際にはすでに遊牧は禁止され、国家規模の「西部開発」による自然破壊のせいであると著者は指摘する。
「スーホの白い馬」は国際理解の題材としてもよく使われるので、「背後にある状況を正しく理解し、発信されることがモンゴル人の願いである」と著者はいう。

日本で長く親しまれてきた民話を通して、馬を愛するモンゴル人の文化、ひいては中国の民族弾圧政策、プロパガンダ工作の歴史を解説する。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みさと

6
子どもの頃から大好きだった絵本『スーホの白い馬』。モンゴルの昔話だとずっと思ってきた。しかし、モンゴルの言い伝えに取材して中国の漢人が編集した物語だった。そういう意味では「中国人の目を通した見たモンゴル」の姿が描かれている物語だったのだ。モンゴル文化を伝える部分がありながらも無理解からくる偏見も描かれている。なぜそうなってしまったのかを追い求めながら、モンゴルの生活は本来どういうものかを伝える。異なる他者の目は、文化と文化をつなぐ橋渡しをするとともに、知らず知らず違うものを見てしまうことを教えてくれる。2021/07/26

ikeikeikea

5
モンゴル人がモンゴル民話とされる『スーホの白い馬』の複雑な成立過程を解説した1冊。風響社から出版されたものの新書化。『スーホの白い馬』がモンゴル人の文化とかなり相違がある事がわかっていく展開がモンゴル人の悲哀を感じさせられる。しかし著者は『スーホの白い馬』を教科書から削除しろ等と主張するわけでなくモンゴルの文化と人々が置かれている状況を理解して貰いたいだけなのだ。日本人は元宗主国として内蒙古の住民に国籍を付与する責任があるとまで言い切る著者の言葉は重い。2021/05/30

MUSAN11383594

3
本書は学術書をもとに加筆修正を加えて新書化したものであるらしいが、文章が固く、少し読みづらい。しかし、スーホの白い馬がモンゴル文化を正確に反映したものではなく、文革期に中国のプロパガンダとして作成されたものだという論証はどんどん引き込まれていく力強さがあった。スーホの白い馬をモンゴル文化の考え方も知ることができ、知的好奇心を刺激される一冊だった。2021/06/11

ミノムシlove

2
「人が乗らない馬は足が遅いから簡単に追いつく。弓を引く必要はない。」「暗くなるまで帰ってこないのはおかしい。羊が狼に襲われる。」「馬が羊を守るために狼に立ち向かうことはありえない。」等、馬と近い人達ゆえの言葉が興味深かった。所々食い違いはあれど、決して批判的ではない。殊に赤羽末吉氏は実際当地で過ごされたことがあるため、細かな点で現地の人の生活を再現していると書かれている(“辮髪入れ“とか!)。馬頭琴は30年程前から聴いている位好きで、この本のQRコードで聴けた曲もとても素敵だった。2021/08/08

御庭番

2
タイトルと本のサイズ感が、昔流行った『○○の真実』のようですが、プロパガンダによりモンゴルの物語だということをしっかり史実から導き出している真面目な書物です。書く言う私もスーホと馬の交流に涙した子供なので、話の感動は感動として残しつつ、他民族について語る難しさを痛感して読了。【図書館で借りました】2021/06/25

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/17977554
  • ご注意事項