内容説明
著者は、土地と不動産について次の問いの回答を試みる。なぜ中央政府が公布した政策は効果を発揮できないのか、政策実行過程で何が起こっているのか、政策実行を阻害する要素はあるのか。本書では、特に地方政府の政策実行インセンティブとそれに影響を与える要素を考察し、さらに中央政府・下級政府との関係、企業等の利益団体との関係などを具体的に明らかにし、そのメカニズムについて分析する。
目次
目 次
「現代中国地域研究叢書」刊行にあたって 天児 慧
序 章 中央・地方関係の新しい視点
1.政治学における中央・地方関係
2.中国研究における中央・地方関係
3.先行研究の限界および本研究の問題関心
4.事例選択
5.分析方法
6.本書の構成
第1章 1994年以後の中央・地方関係と土地
はじめに
第1節 分税制改革以後の中央・地方関係
1.「政府集権」と「行政分権」
2.官僚競争システムの確立
3.政府間請負関係とGDP主義
第2節 県と発展手段としての土地
第3節 中国の土地問題
第4節 中央の政策とその効果
おわりに
第2章 中央・地方の財政関係における土地と不動産
はじめに
第1節 分税制によって形成された利益構造
1.分税制改革と不動産関連税金
2.不動産税金・土地関連費用の構成
第2節 地方財政にとっての不動産関連税金
1.中央・地方財政における不動産関連税金
2.地方財政にとっての不動産関連税金
第3節 予算外資金と「土地財政」
1.土地譲渡収入の増加
2.県級政府の「土地財政」:浙江省の事例から
3.中央・地方関係における「収入」と「支出」のギャップ
4.地方政府による土地運用
おわりに
第3章 土地市場化過程における基層政府の役割分析
はじめに
第1節 土地の市場化過程
1.法律規定上の土地
2.土地徴収段階
3.土地分配段階
第2節 土地市場化過程における使用権変化のパターンと譲渡権問題
1.パターン(1) 農民⇒基層政府⇒企業 譲渡権(OK)
2.パターン(2) 農民⇒企業 譲渡権(OK & NG)
3.パターン(3) 農民⇒基層政府⇒企業⇒購入者 譲渡権(OK)
4.パターン(4) 農民⇒基層政府⇒購入者 譲渡権(OK)
5.パターン(5) 農民⇒企業⇒購入者 譲渡権問題(OK & NG)
6.パターン(6) 農民⇒購入者 譲渡権(OK & NG)
第3節 土地市場化過程における基層政府の役割分析
1.基層政府の制度環境と土地開発
2.土地管理者の沈黙
3.土地は「商品」か,それとも「資本金」か
おわりに
第4章 経済発展手段としての国有不動産企業
はじめに
第1節 不動産業における国有セクター
1.中央所属不動産企業
2.地方所属不動産企業
3.国企業の政府背景:人事の側面から
第2節 北京,上海,広東の事例分析
第3節 国有不動産企業の役割:融資の道具
1.国有不動産企業と銀行融資
2.国有土地備蓄センターの出現
第4節 銀行融資が牽引する経済発展の影
おわりに
第5章 土地の政治経済学と中国政治
はじめに
第1節 配分の危機
第2節 参加の危機
1.農民の政治参加
2.不動産企業主の政治参加
第3節 浸透と正統性の危機
おわりに
終 章 土地と不動産からみる中央・地方関係
1.本書のまとめ
2.土地と不動産からみた中央・地方関係
3.本書の課題
参考文献
あとがき
索 引
任 哲(REN Zhe)
ジェトロ・アジア経済研究所研究員,博士(国際関係)
ほか
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