内容説明
現代社会には、気候変動やテロのようにグローバルな問題、またダムや発電所などの建設をめぐる地域の問題に加え、感染症など社会生活に広く影響する問題があふれている。こうした多様な意見がぶつかりあう場面でこそ求められるのが「合意形成学」である。社会学、工学、情報学など多彩な分野から、領域横断的に合意形成を見通す1冊。
目次
はじめに
序章 合意形成学の構築[猪原健弘]
序.1 合意形成学の必要性
序.2 合意形成の理論
序.3 合意形成の方法
序.4 合意形成の実践
序.5 【学】としての合意形成
序.6 本書の構成
第I部 合意形成の理論
第1章 社会理論における合意形成の位置づけ――社会統合から社会編集へ[今田高俊]
1.1 合意形成をどのように問題とするか
1.2 合意形成のための戦略―構造-機能分析の視点
1.3 了解志向的行為による合意形成―ハーバーマスの対話的理性
1.4 その先の合意形成―差異の社会編集
第2章 合意の前提となる相互協力関係の生成と崩壊[中井豊]
2.1 はじめに
2.2 ギビング・ゲーム・パラダイム
2.3 友人選別戦略
2.4 協力状態の進化シミュレーション
2.5 us-TFT戦略による協力状態の生成
2.6 us-CWD戦略による協力状態の崩壊
2.7 me-TFT戦略と me-CWD戦略による協力状態の崩壊
2.8 強固な相互協力を目指して
第3章 プランニングにおける合意形成[原科幸彦]
3.1 プランニングと紛争
3.2 紛争と合意形成
3.3 話し合いによる合意形成の方法
3.4 廃棄物処理施設整備に向けた長野県における合意形成事例
3.5 合意形成の展開
第4章 合意形成と法的拘束力[金子宏直]
4.1 はじめに
4.2 契約法の原則
4.3 意思表示の仕組み
4.4 意思表示の瑕疵
4.5 典型契約というもの
4.6 合意と時間的要素
4.7 契約の主体と数
4.8 主体の性質
4.9 紛争解決と合意
4.10 紛争解決にみられる主体の複数
4.11 裁判外紛争解決手続における複数当事者
4.12 紛争解決の拘束力と時間
第5章 合意と合意形成の数理――合意の効率,安定,存在[猪原健弘]
5.1 合意と合意形成の理論
5.2 合意と合意形成のとらえ方
5.3 合意と合意形成の数理モデル
5.4 合意と合意形成の性質
第II部 合意形成の方法
第6章 合意形成のモデルと方法[木嶋恭一]
6.1 はじめに
6.2 合意形成のモデル
6.3 開発援助をめぐる合意形成過程
6.4 合意形成の意味とその支援
第7章 討議型意識調査手法――「Deliberative Poll」の実験[坂野達郎]
7.1 はじめに
7.2 討議民主主義と集合的意思形成
7.3 DP の設計思想と手順
7.4 パブリック・コンサルテーション手法としてのDPの評価
第8章 合意形成を支援するツール[新田克己]
8.1 はじめに
8.2 合意形成支援ツールに求められる機能
8.3 合意形成と問題解決技法
8.4 合意形成支援ツールの分類
8.5 合意形成ツールの例
第III部 合意形成の実践
第9章 社会基盤整備での社会的合意形成のプロジェクト・マネジメント[桑子敏雄]
9.1 「社会的合意形成」へのアプローチ
9.2 プロジェクトとしての社会基盤整備
9.3 社会的合意形成のプロジェクト・マネジメント
9.4 合意形成プロセスの設計・運営・進行
9.5 合意形成のリスク・マネジメント
第10章 社会資本の整備・管理と合意形成[内藤正彦]
10.1 社会資本の整備と管理
10.2 社会資本整備の計画策定段階における合意形成プロセス
10.3 社会資本整備の現場における合意形成の課題と対応
10.4 治水計画(河川整備事業)の合意形成にあたっての特徴と対応
ほか