内容説明
明治41年。日本で最初に発刊された日本史の辞典には、実に1万を超える人々の予約が入っていた。文人、政治家、実業家、教育者、市井の人々…。彼らはなぜ初任給よりも高価な本を購入しようとしたのか? それらは今どこに、どのように眠っているのか? 老舗旅館の蔵で見つかった「予約者芳名録」が紡ぐ、知られざる本の熱い物語。
目次
はじめに
第一章 「国史大辞典」初版とは?
そうそうたる購入者たち
歴史辞典の大本山「国史大辞典」
重厚な中身
明治四一年という時代
予約購入とは?
「二〇円」という価格
新聞広告から
日本最古の現役出版社、吉川弘文館
第二章 有名人目白押しの予約者芳名録
名だたる文人たち
近代文学の潮流
辞書の制作者たち
言論人たちによる購入
歌を作った人々
県の歌、そして「国歌」
「デンキブラン」と「浅田飴」
著名人の係累たちも予約
コラム1 『坂の上の雲』の時代
第三章 「予約者芳名録」を鳥瞰する
「予約者芳名録」とは
目次の順序
地域の特性がくっきり
今とは異なる地名や並べ方
「芳名録」はどれくらい残っているのか
本の“販促商品”としての芳名録
コラム2 岩瀬文庫を訪ねる
第四章 「華族」な人たち
調査を本格的に始める
明治から終戦まで続いた華族制度
大名の末裔がずらり
国王の後裔
公家列伝
華族会館図書室と学習院
コラム3 蔵王山中の一軒宿
第五章 近代の先駆者──歴史を学んだ理系の人々
近代科学への扉を開ける
宇宙へのロマン、歴史の浪漫
観天望気と歴史辞典
現代に残るモニュメント──建築家たちの購入
人類学の先駆者と日本人初の動物学者
琵琶湖疎水にかかわった人たち
笹子トンネルを掘った鉄道技師
コラム4 勉強熱心!兄弟姉妹で購入
第六章 「絹と武士」──生糸で軍を支えた明治
芳名録が見つかった藤岡市の「絹宿」
柏屋に養子に来た「松村甚四郎」
高山社蚕業学校
富岡製糸場にゆかりの人々
伊豆長岡の「学者さん」
富岡製糸場の工女のお気に入り、貫前神社
「絹と武士」につながる星野長太郎
新たな「武士」の予約──軍の関係者の購入
参謀本部から軍港堂まで
第七章 今に残る国史大辞典
百年の星霜を超えて現在に残る
手元にある国史大辞典
芳名録に遡れる蔵書
本の意外な流転
芳名録には記載のない有名人からの寄贈
奈良女子大学にも五冊の蔵書
開館時に書店から購入した図書館
小さな図書館に蔵書がある訳
雪国の古い建物にひっそりと
神社仏閣の図書館
コラム5 海外とのつながり
第八章 学び舎と教師たち
小学校から大学、私塾まで
高等教育機関の予約
現在の私立大学
仏教系の学校も目白押し
エリートを輩出、旧制中学
熊本に済々黌あり
私立から公立へ、公立から私立へ
私立の名門中学
旧制中学に残る蔵書
学校の創立者
実業学校でも予約
小学校でも多数購入
国史大辞典の編集を支えた国学院大学
第九章 商店と企業、官公庁
「会社」の誕生
第一生命を興す
三井家と鐘紡
資生堂と和光堂
創業者列伝
地方の名家
銀行も数多く購入
官公庁の予約
県知事から町長・村長まで
コラム6 「委托株式会社」とは?
第一〇章 出版社と書店、図書館
出版社による予約購入
芳名録に書店の占める大きな割合
今も残る地方の有力書店
小さくても暖簾を守る
一方で廃業した書店も
図書館設立の時代
私立図書館の奮闘
本を伝えるために
南葵文庫と石巻図書館
ほか
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