内容説明
本書は「システム」「知」「人間」という三つのテーマのもと、現代教育を思想史的に読み解く。個別の論点を積み重ねることにより、現代教育の全体像を炙り出していく。現代の教育学の到達地点を示している本書は、教育思想史・教育哲学分野だけでなく、教育に関心を持つ人、教育学を学ぶ学生への教育思想史入門の必読書となる。
目次
はしがき[森田尚人・森田伸子]
序 ふたたび近代教育を問い直す
第1章 近代教育と形而上学――「自然」概念再考[森田伸子]
はじめに
1 神学と形而上学
2 啓蒙の宗教批判
3 宗教批判から「形而上学的自己」へ
4 一八世紀における二つのデカルト主義
5 ルソーにおける「教育」と形而上学
第I部 システム
第2章 政治――逆コース史観のアンラーニング[小玉重夫]
はじめに
1 戦後教育学と講座派マルクス主義
2 かくれた対抗軸――戦後の労農派再結集とその挫折
3 脱冷戦的思考をめざして
結びにかえて
第3章 大学――脱・機能主義の大学像の構築に向けて[松浦良充]
はじめに
1 大学改革の大学像
2 ハッチンズの希望と失望
3 ハッチンズの大学像と教育概念
第4章 都市――ジンメルの思想に内在する人間形成論を解読する試み[山名淳]
はじめに――都市にまつわるエピソードからジンメルへ
1 ジンメルの都市論――「大都市と精神生活」にみる都市観
2 潜在的な「都市と人間形成」論としての〈アルプス/ローマ〉論
3 都市の人間形成に関する「文化の悲劇」を超える可能性――結びにかえて
第5章 道徳教育――ナショナリズム/教育勅語がもたらす自己否定[松下良平]
1 問題設定――自己否定の道徳はなぜ受け入れられたのか
2 ナショナリズムと道徳教育
3 国体のナショナリズム
4 教育勅語の政治学
5 自己否定の重層化
第6章 職業教育――戦後教育における一般的教養と技術[江口潔]
はじめに
1 生産主義教育論と教育計画論
2 教育計画論の後退
3 変容する現場の職業教育
おわりに
第II部 知
第7章 教養――ヨーロッパ的人間形成と知的文化[綾井桜子]
はじめに
1 現代日本における教養の模索――高等教育論のなかで
2 ヨーロッパにおける教養と教育
3 教養としての哲学と人間形成――思索の訓練を通じて、生き方を考える
おわりに
第8章 人間形成――教育科学の基礎概念としてのBildung[鳥光美緒子]
はじめに
1 予備的考察――教育科学の基礎概念と一般教育学
2 人間形成概念によって方向づけられた教育学構想の成立と展開
3 一般教育学構想の変容と分析概念としての人間形成――「形成可能性/形成」
4 経験的教育研究と人間形成理論をつなぐ――社会と個人の相互作用としての人間形成
5 経験的研究の基礎概念としての人間形成――人間形成論的伝記研究
おわりに
第9章 教科書――コメニウス『汎教育』における書物一般と学校用書物[北詰裕子]
はじめに
1 汎書籍論における個別的書物の執筆法則――書物の氾濫に抗して
2 普遍的書物の執筆法則――光の協会が用意する書物
3 「神の三書」とその手引き書としての教科書
結びにかえて
第10章 カリキュラム――及川平治教育思想の生命概念[橋本美保]
1 カリキュラムの基礎
2 及川平治と明石女子師範学校附属学校の実践理論
3 及川平治の教育思想
4 生活概念と生命概念
5 教育者の「生命の躍動」
第11章 国語――戦前戦後の言語研究におけるメンタリズムとメカニズム[渡辺哲男]
はじめに
1 戦前の言語学・国語学におけるメンタリズム
ほか
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