内容説明
首都圏・中京圏における3回の大規模調査で子育ての現状を明らかにする。問題は、母親の育児不安、父親の育児参加、子どもの発達といった各家庭の子育ての「表層」ではなく、脆弱な子育て基盤にある。人々が子育てをしやすくなり、それによって出生率が回復して社会の人口が再生産するには、この子育て基盤の強化が必要である。
目次
まえがき[松田茂樹]
序章 子育て基盤に目を向ける[松田茂樹]
I 再生産できない社会
II 子育て基盤
III 基盤づくりの方向性
第I部 子育て・保育のいま
第1章 親の育てかたと子どもの育ち[品田知美]
I よりよい子育てをめぐって
II 子育て法の多様性と現在
III 3歳児神話とその信憑性
IV 映像メディアと親子関係
V 早期教育の現在とその効果
VI 子どものよりよい育ちをめざして
第2章 乳幼児の子育てと親の悩み・不安──子育てへの社会的支援の質と量への期待[汐見和恵]
I 子どもの育ちと社会の責任──現代家族の困難
II 現代の親の悩み,育児不安──在宅子育て家庭と保育園入所家庭の比較
III 子育てへの社会的支援の質と量
第3章 居住環境と親子生活[品田知美]
I 居住環境と子育て
II 居住地域と社会的特性
III 子育て支援施設の利用
IV 子育てネットワークの形成
V 育児不安と生活満足感からみた居住環境
VI 親子生活によりよい居住環境をどう整えるか
第II部 社会関係資本と社会的支援
第4章 子育てを支える社会関係資本[松田茂樹]
I 地域社会のなかで子育てをする
II 誰が支え手か
III 親子を支える
IV 子育ての孤立
V 子育ての社会関係資本の創出
第5章 子どもの育ちと親を支える社会的支援の意味[汐見和恵]
I 少子化対策としての子育て支援
II 子育て支援における親のニーズ
III 幼稚園・保育園の提供している事業と親のニーズ
IV 子どもの育ちと親を支える社会的支援
V 子育て支援の視点と課題
第III部 職業生活と子育て
第6章 労働世界の変動と男性の家族生活への関わり──労働の過剰と脱標準化が家族にもたらすもの [末盛慶]
I 「家族する男性」の社会的背景
II 男性の変化──減少する仕事志向
III 「家族する男性」に関する研究
IV 労働世界の変動と男性の家族生活のつながり
V 現代の労働をとらえる──労働の過剰と脱標準化
VI 労働の過剰および脱標準化と男性の家族生活
VII 使用するデータと変数の説明
VIII 分析──労働世界の変動と男性の家族生活の関連
IX 労働の脱標準化がもつ意味──ジェンダー秩序が変容する可能性
第7章 職場環境と男性のワーク・ライフ・バランス──ジェンダー秩序が揺れ動く条件[末盛慶]
I 本章における2つの問題意識
II 職場環境の構成要素
III 父親の育児と仕事の両立を目指した行為──仕事に「見切り」をつけるということ
IV 父親が育児と仕事の両立を目指して職場で行っている行為──脱仕事志向という概念
V 使用するデータと変数の説明
VI 職場環境と脱仕事志向の現状
VII 職場環境は父親の脱仕事志向および育児時間と関連するか?
VIII 職場環境の重要性──男性のワーク・ライフ・バランスに向けて
終 章 子育てを支える家庭の経済基盤[松田茂樹]
I 不安定になる雇用、広がる格差
II 子育て世帯の経済状況
III 子育てへの影響
IV 子どもの発達への影響
V 子育て世帯に最低限の経済基盤を
VI 避けて通れない国民負担の問題
参考文献
あとがき[汐見和恵]
索引