内容説明
〈第23回日本エッセイスト・クラブ賞〉〈第15回久留島武彦文化賞〉受賞。
生誕92周年に記念復刊した名エッセイの文庫化。
1926年に福井県の小さな町で生まれ7歳まで過ごした。自然豊かな地でのびのびと自由に遊んだ経験をもとに、ごく平凡な子供の遊びを綴った本。
とはいえ、ただ昔を懐かしむものではなく、子供自身が何を考え、どう感じ、様々な思考と準備を経て、生活や人間関係の悩みや葛藤も抱えながら「遊んでいた」のか――。大人の目ではなく、子供の心になって遊びを見つめてきたエッセイ集。
本人による「あとがき」「新あとがき」付き。
文庫版には、「月刊文藝春秋・巻頭随筆エッセイ」(2014.7月号)を追加。また巻頭に〈子供の季節の遊び〉を描いた貴重なカット絵を中心とした16pのカラーページを挿入。
文庫解説・辻惟雄(美術史家)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
76
だるまちゃんの絵本作家、かこさとしさんが、子供の頃の遊びを紹介する。私もやっていた遊びがいくつもある。何の道具もなくても、自然の中にある草や土や光や、自分の手や足さえも、遊び道具となった。かこさんの優しい絵とともに懐かしさが込み上げてくる。今の時代、何でもあるようで失ってしまったものも一杯あるんだなぁと思った。でも読みながらNetflixドラマ「イカゲーム」を思い出していた。全く方向性は違うけど、あのドラマも懐かしい遊びと失ったものを描いていたなぁ。2021/10/26
へくとぱすかる
60
たとえば「ささぶね」といっても、その作り方をどれほどの人が知っているのだろう。エノコログサのてんぐとか、イタドリを使ったままごととか。実はわたしも全然知らなかった。自然の中の遊びとか、今ではおそらく、年配の人の記憶にしか残っていそうにない。注意すべきは、著者は昔がよかったと言っていない点。大人の気づかない子どもの力について書きたかったということだ。2018年。著者は2月に復刊のための「新あとがき」を書き、5月に92歳の生涯を閉じている。福井の武生で過ごした、子どものころの素朴な遊びを書き残した貴重な記録。2022/06/22
雲をみるひと
27
戦前、戦中の子供達の遊びが季節毎に纏められた本。自身の体験がベースになっていることから偏りはあるかもしれないが、作者も含め当時を知る人達の多くが物故された今となっては希少性は高いと思う。戦前の自然環境や子供達の工夫が窺える。2022/07/06
遠い日
14
伝承遊びの記録としてもだいじなものだと思います。昔の遊びは年かさの子に教えてもらうのが普通でした。わたしも缶ぽっくりや竹馬などは父に作ってもらったものですが、遊び自体は子どもだけでしていたように思います。わたしのしてこなかった遊びもいろいろあって興味深く読みました。かこさとしさんの挿絵も豊富で楽しい一冊。2021/07/27
ひでお
9
かこさとしさんが、故郷の武生を始め、全国の子供の遊びを採取した、こどもの遊び論。なぜその遊びが楽しいのか、子どもの視点そのものから考察されています。昔はこうだった、という郷愁の文章でないところがかこさんらしい。本当に子供たちを想っていたのだなあと、改めて思いました。2022/05/07