内容説明
1972年、アメリカ。ベトナム戦争中に海兵隊を不名誉除隊させられ刑務所にいた兄と、数年ぶりに再会した弟。しかし、町で起こるある惨殺事件が、彼らを引き離す――戦争が人々の心に残した傷跡、そして兄弟の絆を描くクライム・フィクション。解説/吉野仁
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
98
著者のジョン・ハートは好きな作家だが、本作もとても良かった。時代はベトナム戦争時のアメリカ。海兵隊を不名誉除隊させられ刑務所にいた、ジェイソンという男を中心に物語は展開する。ジェイソンは3人兄弟だが、双子の兄を戦争で失い、弟が一人いる。そして父は刑事。出所し数年ぶりに弟と再会したが、そこにジェイソンに女性を殺害した容疑がかかる。何があったのか?弟は真実を明らかにするべく奔走する。何故こんな事態になってしまったのか。戦争の傷が全編を覆いつくした家族崩壊の話だが、何とも言えない余韻を感じた作品だった。2021/05/11
Willie the Wildcat
79
生きる目的を模索。誤解と混乱が交錯する中、残された微かな複数の絆が辿る過程と、積み上げる信頼。(Xが犯した罪とその残忍さは否定しないが)ジェイソンを通して、”光”を見出そうとするXの心底に垣間見る苦悩が印象的。”ダイブ”が、もれなく試金石。運試しの要素は少なからずあるが、祈りであり、道標であり、そして願掛けの場でもある気がする。踏まえて本著の難題が、最後の場面のチャンスのダイブ。ダイブの結果を読者に考えさせるのなら、飛び込むのはギビーだったんじゃないかな。この点は、著者の主旨を読み取れなかった。2021/10/14
オーウェン
55
久々のジョン・ハートの新作。ベトナム戦争で疑いをもたれて刑務所に入っていたジェイソンが出所。弟のギビーは喜ぶと同時に引っ掛かりを覚える。それはジェイソンの恋人が惨殺されたからであり、信じないギビーは兄の知人を訪ねていく。兄弟間でもあり家族間のドラマ。疑いがあるからこそ殺人を犯したという名目に真実味が。そこを埋めるのがベトナム戦争中の行動理由。 そして刑務所にいるXのパートもかなりページが割かれており、私刑間近なのに強烈な存在感に圧倒させられる。 ラストのある人物にとって冷や汗が出るような結末も好み。2021/06/25
しゃお
42
ベトナム戦争帰り、ドラッグにハマりレブンワース刑務所に収監されたジェイソンが帰郷するも、ある事件により再びレブンワース刑務所に収監される事に。ジェイソンを信じれない父母に反抗するように弟のギビーは兄の無実を信じて行動に出ます。著者らしい家族の物語に加え、少年が殻を破り成長する姿と、戦争が落とした陰、貧困や差別といった現実を描くかれるのですが、「X]というレクター博士のような存在でエンタメ性を高めつつ、全てを描かない事で安易なものとして落とし込みません。果たして少年は崖から飛び降りる事ができたのでしょうか。2021/07/17
stobe1904
30
【ジョン・ハートのスリラー】舞台はベトナム戦争下のアメリカ、ノースカロライナ州。ベトナム戦争で長兄を亡くし、海兵隊を不名誉除隊となり、帰還後に刑務所に収監された次兄を持つ三男のギビーは多感な時を故郷で過ごしているが…。この作品でも登場人物がしっかり描きこまれ、単なるスリラーで終わらない重厚な人間ドラマに仕上がっている。エドガー賞を2回受賞した実績通りの素晴らしい作品で、ジョン・ハートにはずれはなかった。★★★★★2024/04/29
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