内容説明
18歳の少年が死刑判決を受けたのち逆転無罪となった〈二俣事件〉をはじめ、戦後の静岡で続発した冤罪事件。その元凶が、“拷問王”紅林麻雄である。検事総長賞に輝いた名刑事はなぜ、証拠の捏造や自白の強要を繰り返したのか? アダム・スミスからベイズ統計学、進化心理学まで走査し辿りついたのは、〈道徳感情〉の恐るべき逆説だった! 事実を凝視することで昭和史=人類史を書き換え、人間本性を抉る怪著。解説/宮崎哲弥
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
48
感想も何も…という読後感。不快な苛立たしさでの読了は筆者に無礼かと思ったが。装丁…司直とは人が人を裁く天秤、そんなイメージに惹かれた。が延々と続くアクの強い口調で継続して読めない。務めて刹那的に頻回に。静岡エリアで犯罪多発、拷問王と言われた紅林の異様な表彰歴、冤罪の多さは何かが歪んでいたとしか見えない。アダム・スミスの道徳感情論、ベイス統計学、進化心理学…延々と食らいついていくさまは一種の狂気すら帯びた粘液質な分析。しかし、筆者は道徳感情論の逆説的立ち位置に辿り着いた。その怪感からでか、終章の危うすぎペン2024/01/18
鐵太郎
25
冤罪というテーマを描くのに、なぜこれだけ広いすそ野を広げる必要があったのか、が読後の最初の感想。戦前・戦中・戦後の警察・司法の葛藤と対立。名刑事が拷問王となって冤罪を量産した過程・原因・流れ。人間が進化する過程でなにが起きたのか。「道徳感情」という視点で見た冤罪を生みだす社会の実相。過去を美化したり、戦後GHQにより日本は大変革したという幻想の否定。なんとまぁ、大きなテーマを詰め込んだものか。一回二回読んだくらいじゃ咀嚼できそうにありませんねぇ。(笑)2024/01/27
ねお
21
知らない言葉や事実を調べ、メモしつつ読み進めたら、ボールペン芯を一本換えることになった。冤罪に関する本であり、アダム・スミスの『道徳感情論』の解釈展開書であり、内務省の歴史書であり、捜査・裁判に関わる人間のプロファイリングファイルでもあり、一人或いは複数の警察官の人生を綴った記録でもある。「読書とは物事を構築していく作業であって、そこになにかしら継ぎ足すことができないのであれば、それは読者ではなくたんなる消費者にしか過ぎない」との指摘を前に書き足す努力をしたいが安易な物語による図式的理解に陥りそうで怖い。2021/05/24
テツ
18
戦中、戦後、昭和の時代の冤罪の数々。『自白は証拠の女王』などと言われていたのはもう昔のことだけれど、自白を得るための拷問を始めとした冤罪を生み出す構造についての解説。よっぽどの場合を除いて(紅林麻雄は真犯人から賄賂を受け取っていた節があるらしいが)正義や道徳側に立つ自分たちが悪と対峙しているという『正しさ』故の思い上がりがその原動力になっているんだろうな。犯罪捜査に関わることは一生ないだろうけれど、そうした『正しさ』に浸り酔うことだけはないように自戒して生きていたい。2024/01/08
かもすぱ
18
戦中から戦後にかけて<拷問王>紅林刑事が関わったいくつかの事件を軸に、後世に語り継がれる冤罪事件はどう起きたか、はたまた冤罪はどうして起きるのかを看破する。間違いなく大風呂敷を広げている。700ページ弱もある。脇を固める人物や当時の組織についてもどんどん掘り下げて、それぞれが一つの物語としてエッジが効いていて全貌が眩んでしまうほどだが、最後の最後でアダムスミスの道徳感情論で全てまとめ切る。本来は世界の認識を改めるような実践的な本のはずだけど、ミステリ然としたノンフィクションとして読んだ。面白かった。2021/07/01
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