ちくま新書<br> 現代ロシアの軍事戦略

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ちくま新書
現代ロシアの軍事戦略

  • 著者名:小泉悠【著】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2021/05発売)
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  • ISBN:9784480073952

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内容説明

冷戦後、軍事的にも経済的にも超大国の座から滑り落ちたロシアは、なぜ世界的な大国であり続けられるのか。NATO、旧ソ連諸国、中国、米国を向こうに回し、宇宙、ドローン、サイバー攻撃などの最新の戦略を駆使するロシア。劣勢下の旧超大国は、戦争と平和の隙間を衝くハイブリッドな戦争観を磨き上げて返り咲いた。メディアでも活躍する異能の研究者が、ウクライナ、中東での紛争から極東での軍事演習まで、ロシアの「新しい戦争」を読み解き、未来の世界情勢を占う。

目次

はじめに──不確実性の時代におけるロシアの軍事戦略
「ポスト冷戦」時代の終わり──揺らぐ国際秩序
軍事力の「効用」
非軍事的闘争論
テクノロジーは戦争を変えるか
本書を理解するための基礎知識
第1章 ウクライナ危機と「ハイブリッド戦争」
1 NATO拡大──東欧でのオセロ・ゲーム
リガ空港の「バックファイア」
倉敷に人民解放軍の基地ができたら
後退する「戦略縦深」
小さな軍事大国
「アフガニスタンのことを考えて眠る」
「勢力圏」と「大国」
2 ウクライナで起きたこと
瞬く間に失われたクリミアとドンバス
人間の「認識」をめぐる戦い
ドローン戦争
米海兵隊も舌を巻くロシアの電磁波作戦能力
ウクライナのインフラを麻痺させたサイバー攻撃
3 「ハイブリッド戦争」をめぐって
非クラウゼヴィッツ戦争?
「360度同盟」へ
「ハイブリッド戦争」論の起源
戦争の「特徴」と「性質」
古くて新しいハイブリッド戦争
ハイブリッド戦争に関する3つの論点
第2章 現代ロシアの軍事思想──「ハイブリッド戦争」論を再検討する
1 非軍事的闘争論の系譜
ロシア軍参謀総長が語る21世紀の戦争
レーニンとクラウゼヴィッツの戦争理解
スリプチェンコの「非接触戦争」論
情報の力──メッスネルの「非線形戦争」論
パナーリンの「情報地政学」理論
ロシアの疑心暗鬼
軍隊は役立たずに?
2 「永続戦争」の下にあるロシア
「カラー革命」への脅威認識
戦場としての言論空間
NGOを「外国の手先」と認定
若者の心を め
プーチンの市民社会論
ロシアはなぜ米国大統領選に介入したか
3 「カラー革命」に備えて──ロシア国内を睨む軍事力
プーチンの「親衛隊」
国家親衛軍をめぐる権力関係
ゲラシモフ演説に見る脅威認識
コロナ危機とプーチン政権
4 それでも戦争の中心に留まる軍事力
思想と実践の間
ゲラシモフ演説を読み直す
ドクトリンではなくハッパ
予測の困難性を超えて
第3章 ロシアの介入と軍事力の役割
1 ウクライナ紛争に見る軍事力行使の実際
クリミア半島での電撃戦
二転三転するドンバス紛争
軍隊は強い
親露派武装勢力の「戦う理由」
「ハイブリッド戦争」と「ハイブリッドな戦争」
2 中東での「限定行動戦略」
シリア紛争を一変させたロシアの介入
愛国者公園にて
「第6世代戦争」の入り口
「精密攻撃」と残虐性の価値
介入戦争を可能にした限定行動戦略
3 特殊作戦部隊と民間軍事会社
シリアに送り込まれたロシアの秘密部隊
平時と有事の間で戦う特殊作戦部隊
砂漠に咲くひまわり
民間軍事会社「ワグネル」の誕生
ワルキューレの騎行──ドンバス紛争とワグネル
ワグネルの「事業モデル」
リビアでの敗北
「ワグネルって何ですか?」
4 「状況」を作り出すための軍事力
「勝たないように戦う」
「解凍」されたナゴルノ・カラバフ紛争
ドローンは「ゲーム・チェンジャー」か?
「意志のせめぎ合い」としての戦争
アゼルバイジャンの「読み勝ち」
エスカレーションを抑止する
暴力の行使という溝
第4章 ロシアが備える未来の戦争
1 大演習を見る視角
秋は演習の季節
そもそも演習とは
演習の読み解き方
2 対テロ戦争、大規模戦争、「カラー革命」
変貌するロシア軍
対テロ戦争の時代──「カフカス」と「ツェントル」
「第6世代戦争」に備える
兵士のブーツ
ウィキリークスが暴いたロシアの核戦争訓練
対「カラー革命」演習?
3 「新しい戦争」と総力戦
ロシアから見た「アラブの春」
総力戦の復活
巻き戻されるセルジュコフ改革とウクライナ危機の影
「新しい戦争」
4 国家に支援された非国家勢力との戦い
ミサイルを駆使する「テロリスト」?
「北方連邦」vs「西方連合」
「偶然の一致」──大演習に続く核戦争演習
史上最大規模の「マニョーブル」
4つの戦争モデル
5 演習をめぐるポリティクス
演習規模をめぐる狂騒曲
極東演習と日本
及び腰の日本政府
中露合同演習の虚実
第5章 「弱い」ロシアの大規模戦争戦略
1 劣勢下での戦い方
大陸国家ロシアの宿命
「損害限定戦略」
疑惑のミサイル9M729
「鏡面的措置」で対抗するロシア
2 戦場化する宇宙
凋落する宇宙大国
「宇宙優勢」を目指して
人工衛星に対する「ソフトな」攻撃
ロシアの宇宙状況監視能力
3 ロシアの核戦略──「エスカレーション抑止」をめぐって
破滅を避けながら核戦争を戦う
「エスカレーション抑止」論の浮上
公開された機密文書の中身
通常兵器によるエスカレーション抑止
極超音速兵器とレーザー兵器
おわりに──2020年代を見通す
ロシア流の戦争方法
プーチン・システムの今後
「永続戦争」はどこまで続くか?
「西側」としての日本の対露戦略
あとがき──オタクと研究者の間で
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

まーくん

126
ロシアとプーチンのメンタリティーについて深く考えさせられた。本書は、今般のウクライナ侵攻の暫く前、2021年5月刊。従って2014年のクリミア半島の無血占領へのロシアの戦術(ハイブリットな戦争、非線形戦争)についての考察はあるが現在の軍事作戦についての説明は残念ながらない。しかし著者の言うロシアの軍事戦略から推察するに首都キーウを衝き混乱の中、ロシアの望む体制にしようとするも、思惑通り進んでいないのが現実と思われる。1990年の冷戦終結・ソ連邦解体後のNATOのあまりにも急速な東方拡大が⇒ 2022/07/29

skunk_c

101
本書は出た時から読みたいと思っていて、後回しにしていたらこんな状況に。ご自身が「軍事オタク」と自称されるだけあって、きちんと軍のことが分かって書かれているため、極めてリアリティがある。ロシアの戦略を「ハイブリッドな戦争」(「な」が重要)と捉えており、特にこの10年間の軍事演習に関する分析が本書のキモだと思う。プーチンがNATOの圧力をひしひしと感じていることがよく分かった。一方政治的な分析はあまりないので、そのあたりのことも少し調べてみたい。しかしこれは旅先で読む本ではなかった。もっと軽いものにせねば。2022/03/23

kk

87
総合国力では大したことのないロシアが、なぜかくも大きな軍事的存在感を示しているのか。そんな問題意識から、ロシア最新の軍事的動向に迫ります。ドクトリンを支える軍事思想とその中での脅威認識の変遷、新しい戦い方と伝統的作戦方法の比重の実態、西側の優勢に対応するための技術的可能性追求の思考法や、核兵器の効用に対する考え方の特色などなど。さすがマニアを自称されるだけあって、兵器システム等への知見の深さは並の論者の追随を許しません。抑止やエスカレーション等についての語り口にも、非凡な達人ぶりを感じました。2021/12/07

こばまり

60
ウクライナとの開戦直後にあって今は鳴りを潜めた報道にプーチンは正気を失っているというものがあったが、なるほど本書を読むと、プーチンとロシア軍が一定のセオリーと実績に基づき粛々と作戦を遂行しているように見える。門外漢にも分かりやすく現状の理解に役立った。2022/07/02

ころこ

44
軍事力とその裏付けとなる経済力も大国には劣るロシアが「ハイブリッドな戦争」といわれる時代にプレゼンスを発揮している理由は何か、差し当たり考察されています。国境の反対側で良かったというのが率直な感想で、今もなお「独ソ」の間の国は一定の緊張感が漂っていることを伝えてくれています。本書は日本語で書かれている以上、日本に関係する事象として考察されてもいるはずです。冷戦期には仮想敵国であったロシアのエートスが、見方を変えれば同じ中国に近接している国同士の毒を以て毒を制するようなヒントにならないでしょうか。2021/05/12

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