内容説明
徹底した取材と綿密な調査に基づく重厚な歴史小説で知られる作家・吉村昭。その文学的出発点を示す自選短篇集(全二巻)。第Ⅰ巻には表題作のほか、三島由紀夫が激賞した「死体」、初の芥川賞候補作「鉄橋」など、一九五二年から六〇年までの七編を収める。巻末にエッセイ「遠い道程」を付す。
【収録作品】
死体/青い骨/さよと僕たち/鉄橋/服喪の夏/少女架刑/星と葬礼
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
178
筆者自選短編集Ⅰ!タイトル作を含む7作品。死んでしまった「私」が語る私のこと。列車に轢かれて死んだ隣の男。人生はプラスマイナスとんとんなのだと私に教えてくれたのは誰だったか・・やっぱり吉村さんの作品は体力と思考を奪われる。なんともいえない思いだけは確かに残るのだが。ⅠとⅡ・・続けて読むのはしんどいかも。『青い骨』が好みだが、こんな母を見ている息子ってどうなんだろう・・2018/12/24
ケンイチミズバ
119
貧しい家で肺炎で亡くなった娘の体を3千円で献体に提供する。昭和30年代当時の3千円は今の価値ではどのくらいなのだろう。家計を助け無理を押して働き亡くなる。多くの死がこの作品には描かれているが少女架刑が創作としては素晴らしい。ただ、献体解剖され臓器が取り出されていく詳細な描写は眩暈を起こしそうになる。あまりのリアリティで決しておすすめできません。創作の素晴らしさは自分の体が雨の中、大学病院に運ばれていく道行から病院での扱われ方を克明に見て語る体から離れた少女の意識が第三者の目で淡々と語るその描写につきます。2020/09/29
モルク
100
吉村昭氏の初期の7作品からなる自選短編集。どの作品も「死」が底辺に流れているが、猟奇的、興味本意ではなく緻密に表現されている。時代背景も古く、あの当時はそういうことをしていたんだろうなと思われるものもある。「死体」「鉄橋」のインパクトは大きい。そして表題作「少女架刑」は死者である少女が見つめる解剖され標本となっていく己の姿、そして慕った実母のしうち。引き込まれる吉村節の原点を見た気がした。2019/07/03
yoshida
94
吉村昭さんの初期短編集。死をテーマに描かれている。吉村昭さん自身が結核で死が身近にあった経験も、背景にあろう。表題作は解剖の場面が非常にグロテスクである。貧困で流れた少女の辿り着いた場所。そこに響く音に戦慄を感じる。ミステリとも言える作品もあり異色。息子を徴兵から逃がす為に邸宅に作られた地下室。アクシデントで閉じ込められる老いた母。密やかに秘密を共有する孫の、子供離れした異様さ。家政婦の少女の素朴さと純粋さ。しかし、彼女の八百屋での行動に異質さがある。初期作品ではあるが、物語の深さに技量が現れている。2022/10/09
青乃108号
76
死体を題材にした初期の短編7編をおさめた吉村昭の短編集。どの作品も良いが、特に「少女架刑」と「星と葬礼」が印象深い。死体が題材でありながら読んでいると不思議と心地良い平穏に包まれる。心から穢れが落ちて清らかなものになっていく気がする。手元に置いて何度も読みたいと思った。俺はまだまだ死にたくないが、いつかその時が来たら、この本を棺に入れてもらおうと今は思っている。2021/10/23
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