内容説明
ウマし、マズしと味わって、咀嚼し、ハマる、懐かしむ。
うなぎ、スナック菓子、エナジードリンク。チーズ、きのこ、マーマイト、山椒。あんこの甘さ、地ビールの苦み。
食の記憶、異文化の味。そして、卵へのただならぬ愛着。
「あたしは、カリフォルニアロールである」。
海をまたいだ往来の果て、母/妻/娘の役目をいよいよ終えて、詩人の言葉がほとばしる。
胃の腑をゆさぶる本能を賞味すべし。滋養あふるる偏愛のエッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
64
食べ物を美味しそうに描写できる作家を私は尊敬しているのだが、そのリストに伊藤さんも加わった。食の官能的快感が余すところなく伝わってくる。2021/04/05
Tomomi Yazaki
17
著者は好き嫌いの多い自称・食通。その淡々とした文章は、わがままで、自分勝手で、几帳面で、理屈っぽい。だけど何故か共感できて面白い。しょうもない題材の壮大な宇宙観を、読み手に押し付ける。いや、はなっから、読者のことは頭にないのかもしれない。まるで今やっているドラマの大豆田とわこのナレーターのような語り口。読むリズムと文章が妙にマッチして面白さに拍車がかかり、途中途中の言葉遊びも良いエッセンスになっている。いずれにしても、題名が、この書の全てを物語っていることに、間違いない。2021/04/30
Moeko Matsuda
11
ものすごく面白かった!これはもはや読む食レポ。味や食感の表現がファンタスティック過ぎて、電車の中で危うく不審者扱いされるところだった。もちろん、その食べ物にまつわる思い出エピソードにちょっとじんとするところも…なくはなかったけど、基本は食レポだと思います(笑)。異文化に根ざした食と出会うエピソードを集めた「出会う」のところがお気に入り。もちろん全編すごく楽しく、それでいてちょっとした表現なんかが学びになる一冊でした。ただ解説がなぁ…なんか雰囲気それっぽいけど…他に書きたいプロの人、いくらもいただろうに。2021/11/16
ハルト
10
読了:◎ カリフォルニア在住で、熊本と往き来しながら、それぞれの地域の食文化の違いにも関心を向けている。食べること=自分という潔さ。ウマしウマしと、飽くなき食への挑戦を続けている詩人の、食への探求心が、豊穣な食のエッセイとなって、美味しさを同じように味わった気持ちになる。気取ったところのない、すなおでシンプルな、だからこそ胃に訴えてくるエッセイでした。2021/06/14
りょう
9
文庫をみて、読んだような気もしたけど持ってないので買ったらやっぱり、単行本で読んでいました。伊藤さんの食のエッセイの3冊目。それでも、独特の食の感覚がおもしろくって、まったく既読感もなく楽しみました。アメリカでユダヤ系イギリス人の2人目の旦那さんがなくなって、まったく料理しなくなった、解放されたとかいていた彼女が、熊本に戻ってきてまた、自炊して暮らしてるみたいなので、そのあとの食のエッセイも楽しみにしたいです。2021/07/14