内容説明
「西洋と東洋の美」「中国と日本の美の相違」から始まり、日本の文学に通底する「もののあわれ」「わび」「幽玄美」などを語り、「世界における日本の美の位置」「日本の美を貫くもの」を探究する。ほかに『近代美の研究』から機械やスポーツに関する論考とさらに全集未収録のエッセイ「現代日本画の一つの課題」を増補。初文庫化。
『日本の美』
1 西洋の美と東洋の美
2 中国と日本の美
3 日本のこころと日本の美
4 文学――さやけさ・もののあわれ
5 文学――幽玄・わび
6 文学――軽み・いき
7 美術 1
8 美術 2
9 美術 3
10 音楽
11 舞台
12 世界における日本の美の位置
13 日本の美を貫くもの
『近代美の研究』より
現代における美の諸性格
機械美の構造
スポーツ気分の構造
近代美と世界観
思想的危機における芸術ならびにその動向
(全集未収録論考)
現代日本画の一つの課題次より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
彩菜
31
それは清く新しく滞るものをきらうこころ、軽く柔らかく浅い川を流るる水の如きもの。法隆寺は百済観音の衣紋の流れ、仮名の水手・葦手、鳥羽僧正の兎や鹿が戯れる水の流れ、流動し変化し清新なるもの。それは住居の障子・襖をはらえば自然に解き放たれるが如き自由と自在、ひとつ処に住みつかぬ清々しい軽いこころ。万葉のさやけさ、あはれの淡い哀感、余情深きわび・さび・幽玄、芭蕉の軽みから江戸のいきへ、重さをきらい軽く軽くあきらかなるものを求めるこころ。そこには新しがり軽薄なものの意味が片鱗だにあってはならない。→2023/05/22
nknskoki
1
前半は15分収録のNHK講座を口語調のまま収録した遺作エッセイ集。後半は中井正一の初期論文「近代美の研究」。前半と後半のギャップがありすぎてめちゃくちゃ戸惑ったわ!前半はめちゃくちゃわかりやすかったのに、後半は学者調の硬い論文で一瞬何が起こったん?ってなった。コンテンツの形式が違うとはいえ、遺作と初期論文ではこんなにも差が出るのって面白い。後半から急に「ん?俺の方に邪念でも出たんか?」と思って何回も戻って読み直したりしたけどそれでも意味わからんくてあとがき解説読んでなるほど納得した。以下コメント欄にて考察2020/05/26