内容説明
壬申の乱の勝者である天武天皇以降の日本は、律令に基づく専制君主国家とされる。だが貴族たち上級官僚とは異なり、下級官僚は職務に忠実とは言えず、勤勉でもなかった。朝廷の重要な儀式すら無断欠席し、日常の職務をしばしば放棄した。なぜ政府は寛大な措置に徹したのか。その背後にあった現実主義とは。飛鳥・奈良時代から平安時代にかけて、下級官僚たちの勤務実態を具体的に検証し、古代国家の知られざる実像に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
57
読友さん本。隋唐帝国の成立を受けて、古代日本では中央集権国家を目指したが、そのために必要な優秀な官僚をそろえることができなかったとしている。中下級官人は世襲制の官職につき、出世も望めないので、「怠惰」なのはわかるが、国がそうした勤務態度に妥協してしまう理由がよくわからなかった。確かに漢文の知識がないと官人として仕事にならないので、採用できる人が限定されてしまうのはわかるが、中下級官人向けの「学校」を作ろうとか、勤務態度を向上させる「研修」をしようとした形跡が見られない理由を解明してほしかった。2022/09/02
sayan
42
官僚は怠惰で利己主義で…、この事は昨今メディアを賑わす内容から今更感が強い。しかし、律令時代のそれは現代に勝るとも劣らない強烈さを放つ。著者が「サボタージュ」と言う古代官僚の無断欠勤、欠席、職務放棄とその言い訳へのパワーは、呆れを通り越し清々しい。更に堅苦しい事は避けるが、宴会は参加する人間臭さが憎めない。他方、驚きを伴うのは、政府の寛容=ノンビリ?な対応だ。普くトンデモ話に笑うも一興だが、古代官僚が怠惰行動に走る「動機」と「価値観」、あの手この手で罰則を避けようとする政府の「対応策」議論は読みどころだ。2021/06/16
テツ
31
日本人は基本的に時間を厳守し(効率はさておき)真面目にコツコツと積み上げていく勤勉な民族性みたいなことをぼくもぼんやりと信じていたが、古代の天皇に仕えた役人たちの自由奔放でアグレッシブなサボりっぷりを知り、この民族性とやらはもしかしたら近代になってからこさえられた幻想なのではないかという疑いを抱いた笑 現代日本で霞ヶ関に勤務する官僚の方々はこの時代からは考えられないくらいに働いているなあ……。どちらも行き過ぎたらろくなことはない。優秀で国の為に働く方々は古の諸先輩方を見習ってほどほどに。2021/09/01
みこ
31
古代律令国家の官僚たちはイメージほど勤勉ではなかった。遅刻・無断欠勤。代返は当たり前で取り締まる側も分かっていてあえて厳しい処罰はしない。そんなエピソードの数々。衝撃の事実!かと思いきや、参加しなければならない宴をサボる古代官僚もいれば、自粛しろと言われているにもかかわらず宴に参加してしまう現代官僚もいる。ある意味今も昔もそんなに変わらない。2021/05/13
koji
30
古代の下級官僚は、朝廷の重要な儀式すら無断欠席し、日常の職務もしばしば放棄、しかも政府は寛大な措置に徹しているようです。本書は、その古代官僚制を文献と先行研究から読みといていきます。著者の主張は、今の官僚が志半ばで離職するオーバーワークの状況が健全かという点を憂れうる中から、一定の怠慢を織り込みながら、無駄なく効率的なランニングコストで官僚機構を維持する古代官僚制を合理的と評価するものです。怠慢という言葉が強すぎて共感しにくい面はありますが、「時間に縛られ過ぎの」現代日本への警鐘と考えれば得心がいきました2021/10/09
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