内容説明
哀惜の想いで描いた恩師・阿藤伯海への鎮魂歌――川端康成とは東大同級で、上田敏令嬢への恋に破れたためか、生涯独身の漢詩人・阿藤伯海。法政教授時代は斎藤磯雄に、太平洋戦争下の昭和16年から19年まで旧制一高教授時代は、著者・清岡を初め、若き三重野日銀総裁、高木中央大学学長らに、多大な影響を与えた、高雅な人格と美意識を生きた文学者。痛切な哀惜の想いで描かれた、清岡卓行の恩師への「鎮魂歌」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しずかな午後
9
本書の中心人物は、阿藤伯海(1894―1965)。戦前戦中の一高の漢文教師にして、おそらく日本最後の優れた漢詩人。著者は恩師である阿藤との思い出を「詩人論ふうの私小説、あるいは私小説ふうの詩人論」として精緻にえがく。羽織袴に白足袋を履き、教科書を紫紺の風呂敷に包んでいたその姿。時流に背を向け、自らの愛する古典の世界に身を隠すようにしていた生き様。または、防空壕堀りに駆り出されるも、スコップの使い方が分からなかったという情けない姿。そして生涯を独身で通した孤独な影。そんな恩師を慈しみを込めて綴る。名著。2024/01/14
Ex libris 毒餃子
7
2022年最初の本、美しい文章を愉しむ本でした。2022/01/01
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4
とにかく良い文章。2019/08/04