内容説明
芸術選奨受賞の聞き書長篇。淡々と綴る浄福の世界――北陸の海端の、さびしい河口の町。快活で研究心に富み、情に厚く飾り気のない人柄の、小さな織物工場を営む老主人・紺野友次。家族の消息やありふれた日常の中に、年中行事、信仰、習俗などにささえられた、100年にも及ぶ一族の歴史が描かれ、懐かしい日本の原風景が刻される。地方に生活する人々の真情を淡々と綴る浄福の世界。芸術選奨受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bouhito
2
小説が追体験の書だとすれば、それは小説に「(自分でない他者の)記憶」が書かれているからでしょう。本書は、「記憶」というよりも「記録」に近い。その上、整然と時代順に並べられた「記録」ではなく、語り手が思い出したまま、話したままの「記録」になっています。2015/03/05
7kichi
0
慣れ親しんだ庄野一家の話ではなく、聞きかたり小説なんだとか。つぎからつぎへと、親戚の知人やら、近所の誰やらが出てくる出てくる。庄野潤三の簡潔な文体も垣間見える。2015/05/02
銀木犀
0
北陸で機織り工場を経営する紺野さんの一族の話を聞き書きした本。本の大半は聞き書きで構成され、ご主人の気分によって話がいったり来たりする上、大きなドラマがあるわけではない。方言をなるべく生かし、古い日本の家族のあり方を描いている。最初は退屈で「最後まで読めるだろうか」と不安になったが、後半に出てくる結婚の話あたりは面白く、なんとか読了できた。作者には長い間自分の家族を描きつづけているシリーズがあるが、共通点があるような、ないような。2009/03/23
海
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石川県の紺野さんと飲みながら聞いた四方山話がつづられている。結婚の話とかしだしたあたりからはページが進んだ。最初はペースがつかめなかったけど、ペースがつかめてくると悪くない。昔の田舎ってこんな感じだったのかぁ、ってなります。2022/02/04