内容説明
貞観八年閏(うるう)三月十日、応天門が突如炎上した! 平安京を揺るがす一大疑獄事件の幕開きである。大納言伴善男(とものよしお)は、炎上を左大臣・源信(みなもとのまこと)の仕業と訴えるが、無罪に。そして同年八月、放火犯人は善男父子(おやこ)であると告発する者が出現した――!? ナチスの国会放火事件との類似点から、平安期の大政界スキャンダルの謎に迫る! 巨匠の傑作時代小説集。
感想・レビュー
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withyuko
7
漫画「応天の門」の大納言伴善男は、豪快なイメージなのに、この本の伴善男は不器量な小男で、頭が切れる人と表現されている。応天門に放火した犯人は不明で、結局は、政権を掌握したい藤原基経が、大納言まで昇進した伴善男と藤原良房の弟、良相の力を排除するためにこの事件を利用した、というのが作者の見方のようです。ドイツの昔の事件の裁判や、もし伴善男に発言のチャンスがあったら、という場面も描かれていて面白かったが、図書館の本が何分にも古く傷みがひどかったので、このお話以外にも3編ぐらい載っているが読まずに返却。2019/12/18
ばかぼんまま
2
もんのすごく謎の多い歴史的事件なのに、なぜかあまり知られていない。この騒動をもとに、大伴氏らが没落に追いやられたのであるが、事件の真実は語られていない気がするっ。
韓信
1
応天門の変における伴善男疑獄をナチスの国会放火事件になぞらえて描く実験的な表題作、壇ノ浦から逃れた悪七兵衛景清らの頼朝暗殺の執念の日々「暗殺者」、伊予の国人領主の凄惨なお家騒動を描く「戦国惨殺」、荒木村重配下による自分たちを見捨てた旧主への復讐劇「六百七十人の怨霊」など、技巧的であったり著者得意の残酷物と同系統の作品など、南條範夫らしい短編集。個人的に一番好きなのは、「盲目の大将」香西佳清を二人の兄弟が交代で演じることになる顛末をユーモラスに描く「戦国とりかえばや物語」。素材も新鮮だし着眼点も良い佳作。2023/04/24