内容説明
三代将軍家光が没した。恩寵に与った重臣は、追腹切って殉死した。さらにその家臣たちも。だが、そのなかにあって大組頭・山岡主馬は異彩を放っていた。殉死する理由のない山岡の願いはただひとつ、人の目を愕かせる華々しいやり方で腹かっさばくことだったのだ。(「華麗なる割腹」) 武士(もののふ)の凄絶な美学を縦横無尽に描き切った傑作歴史小説!
感想・レビュー
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韓信
2
鎌倉幕府の滅亡から寺田屋騒動まで、歴史上の様々な切腹を描いた短編集。表題作は、主を思慕しての本腹、理論上切らねばならなくなったための論腹、家禄維持という損得勘定のうえでの商腹、そして名声のためだけに腹を切る名聞腹と、家光に殉死した阿部重次の家臣たちが、殉死を美徳とする価値観のもと、各々の事情で追腹を切るさまを対照的に描き、武家社会の歪さを浮き彫りにした傑作。切腹物とは別に、朝倉義景の愛妾の性格激変の理由を描く「小少将の墓は何処ぞ?」も歴史上の点と点を結んで謎を解明する佳作で、歴史小説の醍醐味が味わえる。2015/01/17