内容説明
恣意的な深読みはなぜ悪いのか。作者の意図は批評にどう関わるのか。客観的な批評を行うにはどのような作業が必要なのか。分析美学の泰斗であり映像批評家としても活躍する著者が、批評をめぐるさまざまな論争を解きほぐしながら批評の本質をつきとめていく。批評の哲学の最前線から突きつける、挑戦的な批評論。
目次
謝辞
はじめに
第一章 価値づけとしての批評
1 導入
2 価値づけからの撤退
3 批評の本性と機能 本章の要約
第二章 批評の対象
1 導入
2 成功価値vs受容価値
3 芸術的意図は批評の価値づけに関わるのか:ラウンド1
4 手短なまとめ
第三章 批評の諸部分(ひとつを除く)――批評はいかなる作業によって成り立っているのか
1 導入
2 記述
3 分類
4 文脈づけ
5 幕間:用語法についての注意をひとつ
6 解明と解釈
7 分析
8 ここまでの議論のとても短い要約
9 芸術家の意図ふたたび:ラウンド2 意図と解釈
第四章 価値づけ 問題と展望
1 導入
2 でもそれって主観的なものですよね
3 批評の原理は存在しない、という意見について
4 分類(再び)
5 批評と文化的な暮らし
訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
19
批評をひたすらに定義する一冊。主張は明確で、帯にもあるとおり「理由に基づいた価値付け」が批評であり、その主張を、想定反論に対する再反論という形で論理立てていく。曖昧なものに枠組みを与える仕事には刺激を受けるが、違和感は拭えない。まず、具体的な価値付けの例が極めて歴史依存的であること。さらに、この本は「良い批評は何か」を語っていない、しかもこの本が規定する批評がとても退屈であること。モーツァルトやシェイクスピアやミケランジェロを現代において傑作として名指すこと自体が、批評精神の欠如の現われに思えて仕方ない。2018/01/09
ねこ
3
本書で語られているのは批評についての主張だが、感想を書く上でも参考になる視点を得られたように思う。作者は作品を何を意図して作り上げたのか、その意図は達成できているのか。その辺りを意識して見ると感想の書き方も自然と変わってくるはず・・・。2024/09/07
die_Stimme
2
1周目終わり。読書会までにあと2回ぐらい読んでおきたい。著者の主張は明確で、「批評とは、理由にもとづいた価値付けである」ということ。これがどういうことか、想定される反論はどのようなものでその反論がどういう点で満足したものではないのか、ということが一つ一つ論理を積み重ねて一冊まるごと費やされている本と言っていいと思う。目からウロコのようなアイデアを求める人には冗長すぎると感じるだろう。私は面白く読んだけど、想定反論を潰していくところは、それで潰せてる??と疑問に思うところは多々あった。2023/01/16
引用
2
たいへん明晰で分かりやすい、最終的に文化批評のあり方を論じることでそれまでの議論の限界を提示する巧妙さよ、、でもかなり保守的なので批判できるところも多い2022/02/04
たろーたん
1
批評を体系的に説明してくれた良書。著者曰く、批評の本質は「価値づけ」である。「良い/悪い」を欠いた批評はありえない。批評を構成する他の要素である記述、分類、文脈づけ、解明、解釈は全て、この価値づけを支えるためのものなのである。つまり、価値づけが一番、その後にこれらをするのだ。批評は自分が提出する価値づけを観客にも理解できるものに仕上げ、観客自身にその作品の価値を発見させようと導くものなのである。故に、記述だけ分類だけで終わっているものは批評に非ず。これはしっかりと覚えておかなくてはならない。(続)2023/07/06