内容説明
第34回講談社エッセイ賞受賞作家こだま
場所と記憶をめぐる、笑いと涙の紀行エッセイ
「俺はたった今刑務所から出てきたんだ」
私たちは「えっ」と発したまま固まった。刑務所と監獄博物館のある街特有の冗談だろうか。膝の上に載せた「かにめし」に手を付けられずにいた。(中略)
別れ際、おじさんが「これやるよ、餞別だ」と言って渡してきたものを広げてみた。それは首元や袖口の伸びきったスウェットの上下だった。
第34回講談社エッセイ賞受賞のエッセイストこだま、待望の新作は自身初となる紀行エッセイ。
どの場所でも期待を裏切らない出来事が起こり、そして見事に巻き込まれていくこだま。笑いあり、涙あり、そしてドラマチックな展開に驚く内容も。
網走、夕張、京都などにとどまらず、病院や引っ越し、移動中のタクシーなど「自分と縁のあった場所」について全20篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sayuri
90
前作「いまだ、おしまいの地」でこだまさんの文章に惹かれ本作も手に取る。『場所と記憶をめぐる、笑いと涙の紀行エッセイ』の説明通り、クスっと笑えるものから、胸が詰まる哀しいエピソードまでが丁寧な筆致で描かれている。大人になってから自分の両親と三人で様々な場所へ旅するこだまさん。良いな、羨ましいな。自分は18歳で県外へ出てしまい、両親との最後の旅行がいつだったのかすら思い出せないが、子供時代、夏は海へ、冬はスキーへ行った記憶が呼び覚まされノスタルジーに浸る事が出来た。心地良くてどこかホッとするこだま節が好きだ。2021/06/01
どんぐり
81
『夫のちんぽが入らない』で、鮮烈なデビューを果たした覆面作家こだまさんのエッセイ4冊目。今回は、京都に始まり、台湾、ハワイ、品川・浅草、著者の住む北海道など、縁もゆかりもあった土地と人の出会いが綴られている。〈乗り合わせた縁〉は、出発が遅れた最終便の機内で隣町に住む老夫婦と出会い、終電間近の羽田から東京の不案内を心配してホテルまでタクシーに同乗して送り届けると、運転手も同郷の人であったというお話。そういう機縁がユーモラスに時に自虐的な面も見せながら描かれている。一度読むとクセになるこだまさんの本であった。2023/04/08
ぶんこ
67
こだまさんの旅エッセイ。一人旅、夫婦旅、親子旅などが自然体で描かれていて好感が持てました。元教師だったということや、自己免疫の病い、夫の病い、子無し等々重くなりそうなことをさらっと流されていて、その文章の在り方に感服。「熊の恋人」のまりこおばさんの夫となられた「熊」のような無骨な男性が書いた恋文、「猫を乗せて」の飼い猫の最期が印象的でした。2021/09/27
シャコタンブルー
67
初読み作家。最初のエッセイ「京都を知っていた」を読んで、ある種の衝撃を受けあっと言う間に全編を読破。詩情豊かで、ユーモアもあり、哀愁も漂う。さくらももこさんのエッセイを読んだ後のようにホンワカとしながらも心に残る名エッセイだと思う。夕張メロンをひたすら食べるシーンや母親の京都タワーの鏡では笑った。新婚旅行のロンドンのホランドパークでの半日寝て過ごす場面では、そんな旅が一番贅沢で思い出になると思えた。旅の奥深さと心の平安を感じた。この作者とは縁もゆかりも感じたので他の作品も読みたいし、追いかけたい。2021/06/13
nyaoko
59
このエッセイを飛ばしていたので、図書館から。こだまさんの、旅のエッセイ。と言うより、こだま家珍道中と言った方がいいかも。大人になって親と旅行なんて、ないなぁ。嫌いと言いつつ、旅行出来る彼女は、根本的には親思いなんだろう。相変わらず引き寄せの魔力というか、笑いの神が降りると言うか、面白かった。なんでもない日常にふと起こる奇跡の不幸が笑う。こだまさんがその事を最終的にネタとして「面白い」と書いてるんだろうけど。2023/11/21
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