内容説明
消えた女。
友の死。
華やかな成功の陰で、暗い《落とし穴》(ピットフォール)が口を開ける街、大都会ニューヨーク。
二つの謎を追う探偵を待ち受けるのは――。
一九五九年、ニューヨーク。
元刑事で探偵のジョーは、役者志望の女性の行方を捜してほしいと依頼を受ける。
その矢先、衝撃的な知らせが。
黒人の探偵仲間ウィリーが殺されたというのだ。
残忍な手口は、女性ばかりを狙う連続殺人事件と同じだった――。
ハードボイルドの美学が詰まった傑作!〈文庫オリジナル〉
解説 林家正蔵(落語家)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
249
1959年、ニューヨーク。正体不明の連続殺人犯イーストリバー・キラーの謎を探る、探偵ジョーの姿を骨太に描く。ミステリー、メジャーリーグ、ロックンロール...堂場趣味満載で、ファン心に染みる。作者が楽しんで書いていることが伝わってくる。ハードボイルド探偵ものの美学に酔いしれたい。2021/08/14
いつでも母さん
183
文庫で厚いし苦手なカタカナ…堂場作品初リタイアか!とにもかくにもカタカナは斜めに読み始めた。俺・探偵ジョーが犯人の目星が付く辺りからどんなオチになるのか気になって最後まで読まされちゃった感じ。1959年のニューヨークを舞台に、人探しから始まり飽きさせず哀愁漂う結末は好み。「俺はこの街で生まれ育った。奇妙なことや怖いことはいくらでも見ている。これぐらいは、何でもないさ。」カッコイイ~!どこに落とし穴があるかわからないのが人生。気を付けたいがこの作品は「面白かった~!」2021/06/02
あすなろ
119
1959年のNYを舞台に描かれる堂場版米国ハードボイルド。違和感なきバタ臭さ満点の満足度高い作品だった。堂場氏はこうした作品を描きたかったのだろうなぁ、という事がひしひしと僕に伝わった。かつて堂場氏がハードボイルドを読み耽って今に至った訳ではなく、翻訳小説を読み耽って今に至ったという趣旨の発言をされていた事を覚えている。確かに堂場氏の警察小説等は翻訳小説の様でハードボイルド調なのだ。そして、氏の作品に彩りを添える音楽や食べ物等も見事に違和感なく彩りを添える。堂場氏作家デビュー20周年の記念碑的作品だと思う2021/10/03
KAZOO
113
堂場さんが50年代のニューヨークを舞台にハードボイルドを書いてくれました。警官をやめた探偵が主人公で警察には比較的協力的な日系人の刑事がいます(サービス)。女性惨殺連続事件が起こり探偵と関係する人物などが被害にあったりします。アメリカの本場のハードボイルドに比べるとやや甘い感じのところが残りますが楽しめます。最後に事件の全貌が明らかになりますがやるせなさが残りました。2021/06/29
タイ子
101
舞台は1959年のニューヨーク。根強く人種差別の残る街で一匹狼の探偵が活躍するハードボイルド。登場するのは日系日本人が1人、ルーツが異なる人種たちとアメリカ人。れっきとした堂場作品でありながら、時々翻訳本を読んでいる気分になるほど作品が日本から離れているのも面白い。堂場さんが楽しんで書いたというだけあって探偵・ジョーはフィリップ・マーロウを彷彿させ、当時流行の曲、野球、当時を知らない者にも十分楽しめる。もちろん、殺人事件が絡むストーリーも様々な事情が交差しながら一気読みさせる面白さ。変化球作品に満足!2021/08/26