内容説明
『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者の新作。中学校の映画サークルで出会ったソラン、ダユン、ヘイン、ウンジは「いつも一緒にいる4人」だった。中学3年に上がる直前、旅先の済州島で彼女たちは衝動的にある約束をするのだが──。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
390
ソウル近郊の京畿道ヨンジン市(ヨンイン?)の4人の女子中学生を描く。4人は全員で一緒にシニョンジン高校に行くことを固く約束するのだが...。彼らの様々な揺れ動きの表現はリアルに韓国の現代(とりわけ教育問題)を如実に反映する。そればかりではなく社会のあり方や希望も。また、それぞれの母親たちがなかなかに毅然としてしているのに比して、父親像は頼りなくもあり、時代にも取り残されている。そんなところもリアルだ。彼女たちのすべてがいい子すぎるような気もするが、それでも細部にわたる表現が小説に強いリアリティを与え、⇒2023/02/13
どんぐり
100
『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者チョ・ナムジュの小説。韓国の高校進学をめぐる女子中学生4人の仲間意識と友情を描く。韓国には特殊目的高校、外国語高校、自立型私立高校、一般高校などがあり、大学入試を視野に置いた進学事情も見えてくる。それぞれ家族がいて、経済状況も違う。友だちも失いたくない。中学3年生直前の春休み、済州島の旅行で4人は約束をする。済州島のミカンの味は、高校の入学式へとつながっていく。ヤングアダルト小説って感じだ。2022/05/04
ルピナスさん
88
同僚と、女子で複雑な想いを抱えず思春期を終えた人なんていないのではと話したばかり。グループ内の一見平和な輪は、家庭環境・学力・経済状況・外見等、違って当然の様々な要素の上に成り立っていて、約束事はまるで踏み絵のよう。韓国の教育事情については、シドニーに住んでいた頃、韓国人の友人から良く聞いていたが、他者より秀でる事がとかく大切という想いが根底にあり、子供の進学期を共に過ごしたら大変そうだと思っていた事を思い出した。なんとも後味の悪い本作品、母親達が毅然としているのが救いでまた同様の作品を探してしまいそうだ2023/04/15
J D
72
ソラン、ダユン、ヘイン、ウンジ。4人の女子中学生達の日常を描いた作品。チョ・ナムジュさんらしくちょいちょいフェミニズムが顔を出す。韓国社会は、文化が似ているので読む易いが、名前で男女を区別するのが私には難しくて読むのに少し時間が掛かった。4人それぞれの思いや生きづらさがあり、それと折り合いを付けながら生きて行く姿勢が良かった。4人の約束が私からすると「そんなこと?!」と思ったのだが、それがまたリアルでいい。映画になりそうなきれいさがあった。チェジュ島のミカン食べてみたい。2023/03/02
おたま
66
中学から高校に進学する少女4人の物語。ソラン、ダユン、ヘイン、ウンジの4人は、中学で映画部に所属し、そこで出会う。一見仲のよい4人組ではあるが、それぞれの家族のこと、内に秘めた思い、そして相互の葛藤も抱えている。その4人が高校進学に際して一つの約束をする。様々な事件も誘発させながら、それぞれの視点からその思いが語られていく。この年代の女の子のもつ瑞々しくまた否定的な面ももつ心の在り方を描き出している。同年代の日本の中学生が読むときっと共感することは多いだろう。また、韓国の受験制度の問題も分かって興味深い。2024/08/05