内容説明
〈源平合戦の勝敗は、黄金と銭が決した!〉
なぜ、奥州藤原氏は義経をかくまったのか。
なぜ、平清盛は福原に遷都したのか。
なぜ、頼朝は弟義経を殺したのか。
十二世紀、中国大陸の宋と金の興亡が、日本へ膨大な富をもたらし、平氏政権を生んだ。
対外貿易に依存する「開国派」の平氏と奥州藤原氏に対して、農本主義に徹して強固な軍事組織を築いた「鎖国派」源頼朝。
東アジアの富と思想の往来、社会経済の転換から、源義経が生きた源平内乱期を俯瞰的に捉え直す。
巻末には、小島氏、保立道久氏(日本中世史)、加藤陽子氏(日本近現代史)との座談会「『新しい時代区分』が必要だ」を特別収録。
従来の枠組にとらわれず、日本の歴史を文明史的視点で再構成する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nagoyan
14
優。「義経の東アジア」という書名からは源義経と東アジア世界との意外な関係というような話を想像してしまうが、一つには、義経の時代(つまり、源平時代)の日本と東アジア(とりわけ、宋・南宋)との関係について書かれている。日本史は東アジア史の一部である。そして、南宋から禅と共に移入された朱子学が、室町・戦国時代以降に広く日本社会に浸透した結果、粗暴な野蛮人であった義経は、我々の知る文化的な英雄と描かれるようになる。本書の義経は現実の義経ではなく、人々の想像する義経であった。2021/09/17
かんがく
10
大河ドラマ義経放映時に、従来の義経像を転換するために書かれた本。本論についてはエッセイ風で論拠に乏しい説が続き、あまり期待していた内容ではなかった。補論の時代区分に関する対談は面白い。日本史研究の際に、中国史、東洋史の視点が極めて重要であるということを再認識した。2021/07/17
広瀬研究会
5
日宋貿易で栄えた平清盛と、それを支えた東北の金。そのどちらにも深い関わりを持つ源義経をキーパーソンに東アジアを俯瞰する、という着想が良かった。ただ、くだけた文章やラジカルな物言いはサービス精神でしていることなんだろうけど、著者自身が「若書き」と振り返っているとおり、上滑りしているように見えたのが惜しかった。特別付録の鼎談は落ち着いた雰囲気と古今東西・縦横無尽の話題で楽しめた。2021/07/13