岩波新書<br> 太平天国 - 皇帝なき中国の挫折

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岩波新書
太平天国 - 皇帝なき中国の挫折

  • 著者名:菊池秀明
  • 価格 ¥946(本体¥860)
  • 岩波書店(2021/04発売)
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  • ISBN:9784004318620

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内容説明

「滅満興漢」を掲げて清朝打倒をめざし,皇帝制度を否定した太平天国.その鎮圧のために組織され,台頭する地方勢力の筆頭となった曽国藩の湘軍.血塗られた歴史をもたらした両者の戦いの詳細を丹念にたどり,中国近代化へと続く道に光をあてるとともに,皇帝支配という権威主義的統治のあり方を問い直す.

目次

はじめに┴一 神は上帝ただ一つ┴「選ばれし者」洪秀全と客家人/科挙の失敗と幻夢/特異なキリスト教受容/布教の旅と大同思想/拒絶された洗礼/上帝会の成立/『天条書』と民衆文化/信者たちの証言/偶像破壊運動の衝撃/シャーマン・楊秀清の登場/救世主と政治結社化/偶像崇拝者としての皇帝/「太平の日」を求めて┴二 約束の地に向かって┴その名は太平天国/清軍の無力/洪秀全と五人の王/「官」への上昇志向/矛盾する儒教的倫理の評価/聖庫制度/反主流派に対する粛清/北上と勢力の拡大/長沙攻撃と長江進出/「賊に恩を感じる」/滅満興漢の主張/「中国人」の発見/大都市の「富」との出会い/南京占領と旗人虐殺/近代ヨーロッパから何を学んだのか/近代文明と排除の論理┴三 「地上の天国」の実像┴洪秀全らの南京入城/住民の組織化と「百工衙」/宣教師の見た南京/特徴的な宗教儀礼/習俗の改変/めざされた公有制/深刻な不平等/諸王の庇護のもとで/分権的な五王制/南京人の反応/不寛容への反発/北伐軍の出発/天津郊外への到達/華北社会の反応/雪解けの泥に敗北/救援軍の壊滅/苛酷な籠城戦/北伐軍の最後┴四 曽国藩と湘軍の登場┴西征の開始/地域支配の始まり/清朝の漢人官僚不信/太平天国の科挙/対儒教政策の転換/読書人対策の失敗/曽国藩の登場/湘軍の創設/湘軍の出撃と勝利/長江を攻めくだる湘軍/形勢の逆転/太平軍と湘軍の違い/地域支配をめぐる争い/西征の終焉┴五 天京事変への道┴イギリス公使の南京訪問/フランス・アメリカ使節の交渉/救世主としての洪秀全/多妻制をめぐる論争/聖書の出版停止/天父の洪秀全叱責/恣意的な天父下凡/諸王の処罰と不和/くり返される専制/楊秀清「万歳をせまる」/ヨーロッパ人の見た天京事変/「上帝の大家族」の挫折┴六 「救世主の王国」の滅亡┴殲滅戦の始まり/報復の応酬/洪仁 の南京到着/『資政新篇』と上帝教改革/洪仁 の内政改革/李秀成の蘇州進出/ヨーロッパ諸国との交渉/夢に頼る洪秀全/自立し始めた諸王/安慶の陥落/李秀成らの浙江進出/諸王による地域支配/決裂した外交交渉/上海、寧波の戦い/雨花台の南京攻防戦/蘇州の陥落/拒絶された首都脱出策/マナを食え/太平天国の滅亡┴結論┴否定的な評価/他者への不寛容さ/分権か、権力の独占か/そして「党国体制」へ/あり得たかもしれない可能性┴あとがき┴参考文献┴図版出典一覧┴関連年表

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

83
太平天国の乱の通史をまとめただけでなく、この宗教的農民反乱が現代中国政治にまで深い影響を及ぼしている事実を明らかにする点で今日的な意味を持つ。広大かつ多様な民族と社会を統一王朝下で統治する難しさと民衆暴力の恐怖を中国人の骨身に叩き込み、国民党も共産党も独裁皇帝制の変種である政党と国家が一体化した「党国体制」を採用する遠因となったのだから。もし太平天国が存続していたら、現在の大陸は欧州のような複数国家が並存していたかもしれないのだ。中国の動向が世界に与える影響を思えば、あり得たかもしれぬ歴史を考えてしまう。2021/02/12

skunk_c

66
太平天国の顛末について、その思想的な成り立ちから清との対峙、そして内紛と滅亡という展開を詳細に描く。清末期でその統治力(特に軍事力)が極めて低下しているとき、さらに同時進行でヨーロッパとも戦争をしているときに、相当な地域を押さえながら、結局清朝を打倒できなかった理由は、やはり民心を捉えきれなかったことか。男女を厳しく分けて生活させながら、洪秀全など「諸王」は多数の女性を侍らせていたという矛盾(既視感あり)や、結局人々の生活を支える生産に目が向いていなかったことが、自滅に至る原因だったように思えた。2021/02/19

kokada_jnet

63
太平天国が天下を取る歴史改変SFを、中国のSF作家の誰かに書いてもらうのを希望。(翻訳されていないだけで、そんな安易な作品は、すでにあるのかな)2021/06/14

ケイトKATE

38
清朝後期に起きた太平天国の乱は、13年にも及び2000万人の犠牲者を出した血塗られた内戦だった。指導者の洪秀全は、キリスト教の影響を受け、神ヤハウェを「上帝」として崇め布教し、清朝の圧政に苦しむ民衆の支持を得ていった。洪秀全率いる太平天国は、皇帝を頂点とする中央集権国家を否定し、「上帝」の元で人々が平等に暮らせる国を目指し清朝打倒を旗印として反乱を起こした。清朝軍を次々と破り中国南部を支配した太平天国だったが、外部勢力への不寛容さと太平天国内部の権力闘争によって自滅する形で崩壊していった。2023/06/22

Miyoshi Hirotaka

34
異文化の受容と変容のコントロールは大きな課題。中国は、キリスト教、国民国家、マルクス主義と3度失敗。毎回、内戦により多くの犠牲者が出た。その最初が170年前の太平天国の乱。キリスト教との特異な出会いにより、独自の「拝上帝教」が成立、南京を中心に勢力を拡大した。一時は、列強各国が外交関係樹立を検討するまでになった。しかし、自分と異なる他者を排除する不寛容さと権力分散により暴走を抑える仕組みがなかったことにより、各国に見限られ、内乱により自壊した。十数年の間に約二千万人の犠牲者が出た。現代中国への伏線が多数。2021/08/20

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