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内容説明
世界最強のロシア陸軍を相手に勝利を重ね、日本海海戦でバルチック艦隊を完膚なきまでに打ち破った日本の陸海軍。しかし、ヨーロッパにおける明石元二郎大佐の活躍がなければ、日本がロシアとの戦争に勝つことはあり得なかっただろう。将来を嘱望された若き将校に下った密命――それは、辛くも勝ちを拾っている日本を有利な条件で講和へ導くために、遠き欧州の地でロシアの後方を攪乱することであった。誰が敵か味方かもわからず、まさしく孤立無援で手探りの戦いを強いられた明石は、持ち前の粘り強く奔放な性格もあって、一人また一人と同志を増やしていく。はじめは小さかった炎も彼が煽り続けるによって、やがてロシア革命へと燃え広がっていった。その明石の地道な活動こそが、ロシアに戦争継続を断念させたといっても過言ではない。日露戦争の表舞台には現れることのなかった活躍を中心に、「奇略の参謀」明石元二郎の波瀾に満ちた人生を描く長編力作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
り こ む ん
35
たぶん。坂上の雲を読まなければ、知らないまま歴史に埋もれた人物の一人だ。公には誉められる事のない仕事。でも、最前線で戦う兵士とかわらない姿がそこにはあった。彼は影となり日本を勝利に導くために、一人である意味、最前線で戦いを挑んでいた。各反政府運動家とのやりとりの中で、裏切り、信頼、疑心さまざま心模様が錯綜する。普通なら、精神的に潰れてしまうだろう仕事だけど、彼の度胸、精神の強さには驚かせられると同時に、当時の日本人の純粋さ、ひたむきさ、なにげなさ、うまくは表現できないのだけど…2019/02/19
ミキスケrx
0
明石の最後の言葉「人間というものは、脆いものだなぁ」が強く印象に残った。最近、70歳を超えた男性が働けなくなり、生活保護を受給するというニュースを見た。この男性は「独身で自由奔放に生きれば60歳くらいで死ぬだろう」と考え、年金を払ってこなかった。しかし、死は訪れず、雇用を打ち切られたことで家賃も払えないほど困窮してしまった。その時の感想が「人間は意外に長生きするものだ」というものだった。人間は心身を酷使すれば早死にするかもしれないが、そうでなければ予想以上に長く生きてしまうこともあるのだと、改めて感じた。2025/04/05