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内容説明
警視庁捜査一課の「取調室」
“伝説の刑事”と容疑者の息詰まる対決!
「完落ち」とは、全面自供すること。したたかで狡猾な犯罪者と警察はどう戦っているのか。
「取調室」という密室での緊迫したやりとりを初めて明らかにした本格ノンフィクションです。
生々しい現場を語るのは、警視庁捜査一課の幹部だった大峯泰廣氏。ロス疑惑、宮崎勤連続幼女誘拐殺人事件、
オウム真理教地下鉄サリン事件など、数多くの大事件の捜査に携わったことから、大嶺氏は“伝説の刑事”と呼ばれるようになり、
“落としの天才”として周囲の信頼を勝ち取ります。著者の赤石晋一郎氏は2年以上も大峯氏に取材を重ねました。
大峯氏はいかにして容疑者を落とすのでしょうか。
犯罪者の背景を丁寧に解き明かし、相手の表情をうかがいながらベストのタイミングで、こちらの手の内を明かすテクニックは、
まさにプロフェッショナルの技。宮崎勤事件では、彼が嘘の証言で漏らした「有明」という地名を突破口に自供へと導き、
宝石商殺人事件では、元警察官だった容疑者のプライドを刺激する一言で一気に自白へと持ち込みます。
緻密な計画殺人者から、冷血きわまりない殺人犯、愛憎に翻弄された犯罪者まで、刑事と犯人との壮絶な闘いのドラマが次々に展開します。
大峯氏は後年、世田谷一家殺害事件の捜査をめぐる警察上層部の方針に納得できず、定年を前に自ら警視庁を去ることになりました。
現場の状況から、大嶺氏にはある“犯人像”が見えていたのです……。大峯氏が職を辞した経緯も、本書で明らかになります。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
74
容疑者と取り調べる刑事の間には、絶対の敵対と不信しかない。まして殺人犯は死刑の可能性もあり、命がけで犯行を否認する。そんな相手を様々な手練手管を駆使して説得し「落とす」技術は、文字通り究極のコミュニケーション能力だ。昭和と平成を騒がせた大事件の容疑者をいかにして自供に追い込んだか、息づまる心理戦は下手な犯罪心理小説など足元にも及ばない迫力に満ちている。宮﨑勤の壊れ具合や純真な土谷正実の洗脳が解かれていく部分など、あの捜査にはこんな裏があったのかと思いながら読んだが、コミュ力の低さを自認する者には辛かった。2021/05/20
Sam
43
誰もが耳にしたことがある数々の事件(ロス疑惑、宮崎勤事件、地下鉄サリン事件や世田谷一家四人殺人事件など)を担当し、被疑者を「完落ち」させてきた「伝説の刑事」、大峯刑事を追ったノンフィクション。あまりに遠い世界の話ではあるが、被疑者の心に入り込み揺さぶっていくことで最後に「完落ち」させるプロセスはとても興味深かった(こういう刑事ばかりであれば冤罪は起きるはずもないのだが…)。一方で、DNA型鑑定の精度の飛躍的向上といった科学技術の進歩は、やがて大峯刑事のような特殊技能を不要なものとしていくのだろうか?2021/05/27
もりやまたけよし
36
書評にあった以上に面白かった。文章がちょっと読みづらかったが、そんなこと関係なく一気に読み進めました。小説より面白いノンフィクションなんて久し振りです。2021/09/25
おいしゃん
33
数多くの重大事件を陣頭指揮してきた刑事のドキュメント。そんな華やかなキャリアを持ちつつも、警察組織の限界を感じてあっさり退官してしまったのが驚き。会社もそうだが、いかに優秀な人材に見限られないか、真剣に考えないといけない。2021/12/15
ばんだねいっぺい
32
「ロス疑惑」から始まる有名な事件の羅列にすごいなと思った。本書では一部抜粋だが、実際の「完落ち」までには息詰まる攻防があったんだろうなぁ、仕事の後は、神経が疲れて、相当なストレスが溜まったんじゃないかと想像した。「傾聴の姿勢」の大事さをしみじみと感じた。2021/08/11