内容説明
福祉政策は生活の根本だ。にもかかわらず、貧困・介護・育児の制度は複雑で、政治の論議も難しい。1990年代からコロナ禍まで、政策の対立点の構図を縦横に読み解き、見えてくるベーシックアセットという活路とは。福祉政治論の第一人者による、類書のない導きの書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆうすけ
9
非常に濃密な選書。昨年に第一子が産まれれ子育て関連書籍を読んでいる中で手に取りました。「例外状況の社会民主主義」というワードが秀逸。福祉の観点でみるとやはり自民党の長期政権は望ましくない。90年代の細川連立、自社さ政権。2009年の民主党政権など結局は自民党にまた戻るのですが、おそらくこの2つの出来事がなければ日本の社会福祉はもっと遅れていたのだろう。とくん介護保険制度は実現できていなかった可能性は高い。そして「マタイ効果」を初めてしった。育休充実や保育無償化は有難いけど低所得者にそれが届かないのは悲劇。2022/03/27
佐藤一臣
8
ベーシックインカムやベーシックサービスはよく耳にするがベーシックアセットは初めて。アセットの意味や実際は読んでもよくわからない。公立の図書館みたいなイメージで、公共でだれもが活用できるものか?だったら、ネット環境なんか携帯含めて全部無料にするみたいな感じか?貧困・介護・育児の諸制度の作成経過が書かれており、その点は非常に参考になる。筆者は「保守主義」「社会民主主義」「新自由主義」という括りで、諸制度がどのようにそれぞれの主義の影響を受けてきたのかを論じる。そこは面白い2023/02/25
jupiter68
4
積読しておいた本。やっと読んだ。福祉政策全般にわたって書かれている。福祉の「対応する話」ではなくて、福祉「政策の話」。だが、考えるにこの分野、いつまでたっても課題を解決することが業務となる。もっと、受け身ではなくて、攻撃に転じられないのか、といつも考えさせられる。2023/01/29
takao
3
ふむ2023/02/07
Ra
3
日本福祉政治史の面白いフレームワーク。政権交代前後の「例外状況としての社会民主主義」が福祉を充実化させるが,安定期に入ると「磁力としての新自由主義」が削減し,浸透している「日常的現実としての保守主義」が隠然と抵抗する。新しい社会的リスク間の性質の相違や,既存制度・関連団体の存否による,政策立案過程の比較分析も興味深い。ベーシックアセットは現金と現物をうまい具合に組み合わせるもの,という程度しかわからないが,問題意識は共有された。福祉政治史の文脈での「例外状況」をどう作り出す/されるか,が課題と思われた。2021/09/30