内容説明
中国共産党中央の熾烈な権力闘争の下で、
労働者が生活を守られ、国民として統合されたのはなぜか。
労働者統合の組織「工会」を事例に、
人びとの生活を守る「安定化装置」がどのように機能したのかを探る、注目の書。
目次
序 中国における重層的権力構造と生活者の統合――本書の主題
第一部 社会主義国家建設期の工会建設と労働者の統合(一九五〇~六〇年代)
第一章 国家建設と労働者の統合
第二章 社会主義化と労働者の統合をめぐる四つの対立
第三章 社会主義国家建設期の地方における労働者の統合――浙江省の事例
第二部 改革開放期の工会建設と労働者の統合(一九八〇年代)
第四章 改革開放と労働者の統合
第五章 改革開放期の地方における労働者の統合――浙江省の事例
結 語
資料・参考文献
あとがき
索 引
感想・レビュー
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BLACK無糖好き
19
中華人民共和国の建国期より、都市部の労働者を党と国家の下に統合するための枠組みとして位置づけられてきた工会を分析し、1950年代から改革開放の初期にあたる80年代の労働者統合政策の推移を描出。中央-省-地-県-郷-基層の各レベルでの重層的政治構造が、中央と地方のせめぎあいの中で地方における政策の裁量権を生み出した。労働保険をはじめとする生活保障制度は、地方の党・工会が労働者を統合し、地域の安定を図る手段となった。◇この中央と地方の構図から、現習近平政権の集権化が末端まで及ぶのか改めて注目される。2023/11/13