「役に立たない」研究の未来

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「役に立たない」研究の未来

  • ISBN:9784760153480

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内容説明

ほんとうのイノベーションは、ゆっくりと、予想外に始まる。

■内容
いつの時代も、研究者は未知に挑み、人類の発展に貢献してきた。誰も解明していない謎を追う人。社会課題の解決に努める人。いつ、何の役に立つかがわからなくても、未来へより多くのものを託そうとする人。彼らの人生をかけた挑戦の積み重ねの先に、今の私たちの生活がある。そして、その原点にはいつだって飽くなき知的好奇心があった。

しかし、日本では現在、運営費交付金の減少や科学技術関係予算の過度な「選択と集中」などが原因で、研究者が知的好奇心をもとにした基礎研究を行いづらい状況にある。それゆえ、イノベーションの芽を育てるための土壌が崩れつつある。

令和の時代において、研究者たちはどのように基礎研究を継続していくことができるのだろうか? 社会はどのようにその活動を支えられるだろうか? そもそも、私たちはなぜそれを支えなければならないのだろうか?

本書は、各分野の一線で活躍する3名の研究者が、『「役に立たない」科学が役に立つ』をテーマにした議論を中心に、書下ろしを加えたうえでまとめたものである。これからの「科学」と「学び」を考えるために、理系も文系も、子どもも大人も、必読の一冊!

■目次
はじめに 科学とお金と、私たちのこれから(柴藤)

第一部 「役に立つ」ってなんだ?――プレゼンテーション編
 一 「役に立たない」科学が役に立つ(初田)
 二 すべては好奇心から始まる――“ごみ溜め”から生まれたノーベル賞(大隅)
 三 科学はいつから「役に立つ/立たない」を語り出したのか(隠岐)

第二部 これからの基礎研究の話をしよう――ディスカッション編
 一 「選択と集中」は何をもたらしたのか
 二 研究者にとって「アウトリーチ活動」とは何か
 三 好奇心を殺さないための「これからの基礎研究」

第三部 科学と社会の幸福な未来のために――対話を終えて
 一 科学と技術が、幸福な「共進化」をとげるための実践(初田)
 二 個人を投資の対象にしない、人間的な科学のために(大隅)
 三 人文社会科学は「役に立つ」ほど危うくなる(隠岐)

謝辞 「役に立たない」研究の未来(柴藤)

■装画
カシワイ

目次

はじめに 科学とお金と、私たちのこれから(柴藤亮介)

第一部 「役に立つ」ってなんだ?――プレゼンテーション編
一 初田哲男 「役に立たない」科学が役に立つ
二 大隅良典 すべては好奇心から始まる――“ごみ溜め”から生まれたノーベル賞
三 隠岐さや香 科学はいつから「役に立つ/立たない」を語り出したのか

第二部 これからの基礎研究の話をしよう――ディスカッション編
一 「選択と集中」は何をもたらしたのか
二 研究者にとって「アウトリーチ活動」とは何か
三 好奇心を殺さないための「これからの基礎研究」

第三部 科学と社会の幸福な未来のために――対話を終えて
一 初田哲男 科学と技術が、幸福な「共進化」をとげるための実践
二 大隅良典 個人を投資の対象にしない、人間的な科学のために
三 隠岐さや香 人文社会科学は「役に立つ」ほど危うくなる

謝辞 「役に立たない」研究の未来(柴藤亮介)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

93
日本の基礎研究が置かれた問題点を議論するオンライン座談会を収録した一冊。特に「役に立つ」ということを巡る発言が注目される。大隅良典先生の発言に説得力がある。「基礎科学は役に立つ」という主張には身を置かないと言う。科学は人間の知を拡げる活動であり、「文化」として捉えた方がいいと。役に立つという言葉がこの社会をダメにしているという先生の指摘は、トクヴィルが「早い頭の回転と皮相な思いつきを過大に評価しがちであり、深淵で時間のかかる精神活動は逆に極度に軽視される」として民主社会を批判したことと繋がっている。2021/07/16

けんとまん1007

67
かねてから大隅先生だけなく、ノーベル賞を受賞された方から、相次いで表明されていること「基礎研究の重要性」について、改めて述べられている。その根っこにあるのが、「役に立つ」という言葉。しかも、選択と集中とか言って、短期的な目線でしか考えない姿勢。この国の科学・学術の弱体化につながるのは当然の帰結だと思う。それは、この分野に限らず、この国を覆っている価値観でもある。役に立つということ自体の意味もあるし、それがわからないからこそ、やるべき価値があるのだが。次の世代という視点の欠如でもある。2021/09/26

hit4papa

50
今は役に立たないけれど、将来は役に立つかも(?)な基礎研究のお話し。アカデミアにビジネスとしての出口を求め過ぎているように思える今日この頃。故に基礎研究が蔑ろにされているんですね。長い年月をかけた基礎研究が、ある時、イノベーションを起している事実を知ると、将来の益々の国力低下が懸念されます。本書は、Zoomでのパネルディスカッションを本にしたもので、理系じゃなくとも「役に立つ」のホントの意味が良く分かります。科学における「選択と集中」って罪深いワードですね。やっぱり基礎研究は1番じゃなきゃダメなのだなぁ。2021/04/27

shikada

29
研究費が減らされ続けている基礎研究の話。基礎研究は、短期的に産業を活性化させたり、社会問題を解決したりはしない。しかし、長期的には他の多様な科学研究に波及して、イノベーションにつながる。発表後、50年以上立ってから爆発的に引用されはじめる論文も少なくない。「選択と集中」は、基礎研究のそうした特徴を無視した方針。なんか読んでると、原因は国力(特に経済力)の低下だという気がする。現代は将来に期待を持ちにくく、経済的にも苦しいから、多くの人が遠い将来のことを考えにくい時代であるとの説明には納得。2021/09/12

venturingbeyond

29
昨年8月に開催された日本の基礎研究の惨憺たる状況を憂い、なんとか現状を少しでもましなものにしようとの問題意識を共有する3人の座談会をまとめた一冊。全体のトーンは、当然暗いものとなっているが、それぞれの三者三様のフィールドで活躍する論者が、座して死を待つ訳にはいかないと、わずかながらも現状を好転させるべくアイデアを実践に移し、それぞれがかすかな可能性を語っている。最終的に、世論の理解と支持なくして展望は開けないことは、関係者の共通見解であり、アウトリーチがその鍵ではあるのだが...。2021/07/18

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