菌根の世界 - 菌と植物のきってもきれない関係

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菌根の世界 - 菌と植物のきってもきれない関係

  • 著者名:齋藤雅典
  • 価格 ¥2,640(本体¥2,400)
  • 築地書館(2021/04発売)
  • ポイント 24pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784806716068

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内容説明

緑の地球を支えているのは菌根*だった。
陸上植物の8割以上が菌類と共生関係を築き、菌根菌が養水分を根に渡し、植物からは糖類を受けとっている。
植物は菌根菌なしでは生きられない。
*---菌類と植物の根の共生現象のこと

内生菌根・外生菌根・ラン菌根など、
それぞれの菌根の特徴、観察手法、最新の研究成果、
菌根菌の農林業、荒廃地の植生回復への利用をまじえ、
日本を代表する菌根研究者7名が
多様な菌根の世界を総合的に解説する。

菌を食べてしまう植物
光合成をやめた植物と菌根菌
枯れ木を渡り歩くタカツルラン
森林土壌から放出されるCO2の鍵をにぎる外生菌根菌
成木と実生の根の間の菌糸ネットワークが実生の成長を左右する
などなど、知られざる土の中の不思議な世界へようこそ

目次

はじめに

序章 地球の緑を支える菌根共生─菌と根の奇跡の出会い―――齋藤雅典・小川 真
根の表面を覆う菌と根の内部に入りこむ菌
特定の植物と関係を結ぶ菌
緑の誕生
植物と菌が出会うとき
【コラム】菌根と共生─用語の使い方(齋藤雅典)

第1章 土の中の小さな宝石─アーバスキュラー菌根菌―――齋藤雅典
心を虜にする輝く胞子
アーバスキュラー菌根菌を観察する
分離し、同定し、分類する
分類体系の見直しにつながる発見
根が菌を呼び寄せる
アーバスキュラー菌根菌はどうやって植物と物質のやりとりをしているか
根組織から樹枝状体を取り出す
菌根共生を制御する遺伝子
農業利用への道
利用の難しさと可能性
荒廃地での植生の回復と菌根菌
【コラム】菌類の分類と同定(齋藤雅典)

第2章 外生菌根の生態とマツタケ―――山田明義
外生菌根菌に支えられる樹木たち
外生菌根を観察する
土壌から養分・水分を吸収するのは根ではない
実験で外生菌根共生を証明する─菌根合成
樹木の成長を左右する外生菌根
外生菌根とキノコ
外生菌根共生の進化─起源と将来
マツタケと菌根共生
国産マツタケの生産と森林環境
マツタケ─シロとその生態
マツタケの近縁種とその地理的な分布
いかにマツタケを増産するか
マツタケはわからないことだらけ
【コラム】わが国における外生菌根研究事情(山田明義)

第3章 外生菌根菌を通して海岸林の再生を考える―――松田陽介・小長谷啓介
海岸の植物が厳しい環境で生育できるわけ
海岸林に生育する植物と菌根菌
海岸に生えるキノコ
海岸クロマツ林を支える菌根菌
キノコ調査と根の観察からみる菌根菌の多様性
DNA解析を利用して菌根菌の多様性を研究する
海岸クロマツ林にはどのくらいの種類の菌根菌が生息しているのか?
菌根菌の多様性と樹木の成長
謎の「黒い粒」菌核─セノコッカム・ジェオフィラム
セノコッカムの知られざる生態
塩に耐える力─菌根菌、菌根の塩類ストレス
耐塩性の高い菌根菌を探せ
海岸林の再生に菌根菌を利用する

第4章 菌によりそうランの姿を追いかけて―――辻田有紀
はじまりは菌とともに
ネジバナの菌根菌をみてみよう
世にも奇妙なマヤランの虜に
DNAで正体を暴け
マヤランの種まき大作戦
ランの始まりを求めて屋久島へ
運命の分かれ道
世界最大! キノコを食べるラン

第5章 菌根共生の原点─コケ植物とシダ植物の菌根共生―――辻田有紀
コケ植物の菌根共生
タイ類で見つかった新たな共生系
シダ植物の胞子体における菌根共生
損する? 得する? 菌と植物のかけひき
光合成をする配偶体に菌根菌はいるの?

第6章 菌類を食べる植物─菌従属栄養植物の菌根共生―――大和政秀
菌根共生、菌従属栄養植物との出会い
菌従属栄養植物とは
コケ植物の菌従属栄養植物
シダ植物の菌従属栄養植物
ラン科植物キンランの菌根共生
神社林のタシロラン
巨大な無葉緑ランを支える菌根菌
菌からランへどのように栄養は移動するのか─同位体で探る
菌からランへの炭素・窒素の流れをみる
菌根菌にとっての菌従属栄養性のメリット
多様なツツジ科の菌根共生
モノトロポイド菌根
アーブトイド菌根─部分的菌従属栄養性
アーバスキュラー菌根を形成する菌従属栄養植物
希少植物の保全と菌根共生
【コラム】私が菌根研究者(マイコライゾロジスト)になったわけ

おわりに─菌根共生の進化を考える(小川真)
編集後記(齋藤雅典)
参考文献 
索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アナーキー靴下

40
タイトルから内容想像できず、お気に入りの方の感想に感謝。有名な菌根エピソードは、マツタケが人工栽培困難とか、マメ科植物の窒素固定などだと思うが、そんな菌根の深い世界が詰まった本。植物を育てることが好きな人にとっては興味深い内容だと思う。今までは「土の中の微生物のチカラ」とか言われても、寝ている間に仕事をしてくれる小人のような、目に見えないけど信じておきたいおまじない程度の認識だったので、この本で科学的な知見を得られたのはとても有益だった。ツツジ科が酸性土好きなのも菌根ゆえというのは驚き。もっと知りたい!2020/12/21

たまきら

33
美しい表紙に惹かれて。ミミズコンポストを始めてから色々な生物が発生するので、植物と共生する様々な生物に興味が出てきました。きっと私たちがまだまだ知らない共生関係がたくさん存在しているんでしょうね。うちのコンポストの生物を調べるにはどうしたらいいのかな。2022/09/06

mft

8
図書館本。面白い。地衣類とはまた違う菌類と植物の共生関係で、陸上植物の(アブラナ科とアカザ科などの例外を除き)8割ぐらいは菌根菌と共生しているらしい。そんなに一般的なものだったとは。この本は何人かの研究者が、一番普通に見られるアーバスキュラー菌根、大樹を支える外生菌根、ランに特異的なラン菌根、コケやシダ植物の場合、菌従属栄養植物、とそれぞれの分野ごとに紹介しているので(一部紹介されていない種類があるようだが)わりと全体像が多角的に見易いと思う。続刊もあるらしいので近いうちに2024/02/04

人生ゴルディアス

6
面白かった。菌への興味は腐朽菌からだったので、菌根の話は基礎的なこともよくわからず、最初はアーバスキュラー菌根はそういう種名なのかと。菌根の形成の仕方で分類されてるようだ。菌従属栄養植物というのも初めて知ったが不思議なもので、光合成をしない植物が、共生のはずの菌から一方的に炭素をもらっている…等等(実際は成長の各段階で主従が入れ替わっているのではと示唆されていたが)。気になったのは、どうやって菌が搔き集めたリンだのを植物に渡しているのかの、その詳細の説明がないこと。バケツリレーみたいに運んでるのか? 2024/03/15

ぴょんpyon

5
菌と植物の根の共生体である「菌根」を一般向けに解説する。菌類全般を扱った書籍ではほとんど描かれないラン菌根やモノトロポイド菌根といったマイナーな関係にも多く紙面を割き、筆者らの研究成果を交えながら「何がおもしろいか」を語る。読み通せば「なぜこんな進化を遂げたのだろう」などと、いろんな「なぜ」が頭に浮かんでくるに違いない。そういったおもしろさが味わえる本だと思います。2020/10/21

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