内容説明
2016年5月1日で「公式確認」から60年を迎える水俣病.私たちはどこまでこの問題の実像を知っているだろうか.今もなお,多くの人たちが救済を求めているのはなぜなのか.世界に例をみない健康・環境破壊をもたらした水俣病事件の軌跡を,様々な人物を織り込みながらたどり,この問題が現在の私たちに何を問いかけているのかを考える.
目次
はじめに┴第一章 問題の始まり 予兆はあったのだ┴第二章 空白の時代 生かされなかった研究成果┴第三章 噴出するエネルギー この国のあり方が問われた┴第四章 水俣病とは何か 事件の核心が現れる┴第五章 水俣病は続いている 未来への「財産」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
91
水俣病の認定第1号は、1956年5月1日チッソ附属病院細川一が診断した2歳の田中実子と姉静子だった。水俣病の被害者は何人かという問いかけにも、公害補償法による認定者と1995年政府解決策対象者、2009年水俣病特措法による対象者がいて、単純には答えられない。それは工業排水による汚染が大正時代からあり、チッソが戦後日本の復興を支える程の企業であり、日本政府も熊本県も黙認していたことなど歴史的経緯が事態を複雑にしている。水俣病は現在進行形である。田中実子は今も24時間ヘルパーの介助を受けて水俣に暮らしている。2021/10/26
Naoko Takemoto
3
公害問題については子供の頃から興味があり、ひいては今の職業についた理由のひとつなのだが、本書は水俣来訪するので再学習するために手に取ったものだ。情けなくも、エピソードを読んでいるだけで涙が止まらない。だから、統計の部分まで読み飛ばして瞼を乾かしたりした。ホント酷い話だ。完全な高度成長期の犠牲じゃないか。チッソも政府も市も県も責任を認めたのが遅すぎる。ただ患者や家族が最も心を痛めたのが、同じ市に住む者達から受けた差別、偏見、中傷だったというから更にいたたまれない。2016/08/10
yuxxlogy
0
◎2016/05/17
call
0
水俣病についての本。水俣病といえばやや使い古された感じのある単語であるが、この本で初めて知ったことは多かった。水俣という寒村がチッソという大企業によって支えられていたために、水俣病への対応の障害になったことは、政治学と公共政策を学ぶ身としては非常に興味深かった。地方自治体、ひいては国が誰のためにあるのか考えさせられる一冊であった。2017/04/14
イカクジラ
0
公式確認から60年という年の終わりまでに「苦海浄土」を読み終えたい思いで、副読本として手に取ったのですが、水俣病のこと、まったく知らなかったと恥じ入る次第です。小冊子ながら患者、政治、行政、チッソの歩んだ歴史が丁寧にまとめられています。水俣病に関係の深い「ひと」を取り上げるスタイルが良いです。川本輝夫氏、杉本栄子氏、緒方正人氏らのことばが印象的でした。被害者のはずの緒方氏が「チッソは私だった」というのは何故か。ここに水俣病の現代に投げかける終わらない問いがあるんだと思います。2016/12/20




