内容説明
男子高の二年に上がってまもなく学校に行けなくなった薫は、夏のあいだ、大叔父・兼定のもとで過ごすことに。兼定は復員後、知り合いもいない土地にひとり移り住み、岡田という青年を雇いつつジャズ喫茶を経営していた。薫は店を手伝い、言い知れない「過去」を感じさせる大人たちとともに過ごすうち、一日一日を生きていくための何かを掴みはじめる――。思春期のままならない心と体を鮮やかに描きだす、『光の犬』から3年ぶりの新作にして、最初で最後の青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
256
書店で気になり、図書館に予約して読みました。 松家 仁之、初読です。先入観なしで読んだので、表紙のイメージと異なり、海辺の一夏の経験青春譚の佳作でした。 ジャズ喫茶「オーブフ」に行って佇んでみたい。 https://www.bookbang.jp/review/article/6763652021/07/28
いつでも母さん
183
久しぶりの松家作品。『泡』というタイトルから何を連想しますか?産まれて生きて死んでいく…宇宙規模で考えると人の一生は泡のような。え?そっちの泡?そんな症状は辛いだろうなぁ薫君。でもね、大叔父・兼定のジャズ喫茶・オーブフでひと夏を過ごして、そこで働く岡田と知り合い、間違いなく強くなったよね。自分に自信が出来てきたのかな。途中に挟まれる兼定のシベリア抑留中の事が私の亡き父の姿を重ねてしまい切なかった。余韻を残す3人の男たちのこれからが気になる終わり方。2021/04/30
シナモン
147
とても良かった。読み始め、これは苦手系かな…と思ったけど、全くそんなことはなく静かな世界に入り込めた。シベリア抑留という圧倒的な体験をしている兼定。生き辛さを感じている薫だけど、こんな大叔父の元で暮らしたひと夏の経験はこれからの人生にプラスになるだろう。繰り返される淡々とした日々、ジャズ喫茶…海辺の町の風情も心地よく落ち着いた気持ちになれる一冊でした。2021/09/13
モルク
136
東京に住む高2の薫は不登校になり、夏休みの間関西の海辺の町でジャズ喫茶を営む大叔父兼定の元で過ごす。兼定の戦中戦後シベリアに抑留されやっと帰国しても家族に歓迎されなかったことなども語られ、兼定と薫の話が交互に描かれる。薫はジャズ喫茶を手伝い、そこで大きな励ましや変化があるわけではないが、淡々とした日常を行うことで少しずつ変化が表れる。店の従業員岡田のたまに見せる笑顔、彼の料理を手伝い料理の楽しさ喜ばれる嬉しさを学んでいく。今までの松家作品とは趣が異なるが、不器用な男3人がゆっくり心にしみる。2021/08/27
ちゃちゃ
124
「自分にはピンがない」高校2年になり、薫は高校に通えなくなった。学校という集団への帰属感は時に自分を縛り息苦しくさせる。けれどピンが外れて風に飛ばされ、いったいどこへ行き着くというのか。自分がまだ何者でもないという、思春期を生きる人たちの底知れぬ不安や孤独…。大叔父の営むジャズ喫茶でひと夏を過ごす薫は、静かに過ごせる時と場を得て、溜め込んだ思いと向き合ってゆく。私たちの命は、いずれ海の泡のように儚く消えてゆくものかもしれないが、その孤独な営みの中でこそ、人は他者と出会い静かに自分を見いだしてゆくのだ。2021/06/07
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