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内容説明
その女性は、出生前診断をうけて、「異常なし」と
医師から伝えられたが、生まれてきた子はダウン症だった。
函館で医者と医院を提訴した彼女に会わなければならない。
裁判の過程で見えてきたのは、そもそも
現在の母体保護法では、障害を理由にした中絶は
認められていないことだった。
ダウン症の子と共に生きる家族、
ダウン症でありながら大学に行った女性、
家族に委ねられた選別に苦しむ助産師。
多くの当事者の声に耳を傾けながら
選ぶことの是非を考える。
プロローグ 誰を殺すべきか?
その女性は出生前診断を受けて、「異常なし」と医師から伝えられたが、生まれてきた子は
ダウン症だったという。函館で医師を提訴した彼女に私は会わなければならない。
※この電子書籍は2018年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nyaoko
57
高年齢出産の為、出産前診断をした身内がいる。当時、それを聞いた私は激しく拒否感を顕にした。「避妊とは?」「障害にも色々あるけれど?」「何故?」「何故?」と言った沢山の感情だ。とは言え口には出来ず、陰性だったその子は無事に生まれた。本書を読み、改めて出生前診断の内容と優生保護法の事を知り、激しく動揺した。何処にも正しい答えがないように思えた。医師も助産師も看護師も、母親も、赤ちゃんも、みんな置き去りにされている。しかし、生まれて来なくていい命なんてない。どこにもないと信じたい。2021/11/30
cao-rin
27
出生前診断。重い重いテーマでした。読んでる間中、ずっと自分だったらと考えていました。命の選択にも直結するこの検査には、法律の矛盾やもっと議論すべき点を有耶無耶にしたまま、妊婦だけにその選択の負担を押し付けた状態になっていると感じました。声なき胎児の命を一体誰が選択出来るでしょう。短く苦痛だけの命なら産まれてこない方が良かったのでしょうか。そんな単純な話ではないのです。ダウン症当事者の「生まれてこなければ良かった命なんてない」という言葉だけは本質をついていると思いました。2021/06/01
ロア
23
様々な立場にある当事者たちの本音が率直に語られていると感じた。このような言葉を引き出す著者の取材力が素晴らしい。大宅壮一ノンフィクション賞&新潮ドキュメント賞W受賞と言うのも納得です。2021/06/04
がらくたどん
22
18年の出版当時の感想メモには「何が正解かわからない。どう生まれても幸せに生きられる社会でありたい」と。終末期の「死ぬ権利」と同列にリビングウィルを明示できない胎児の「生まれない権利」を考えてよいのか自分には大きな違和感が残る。出世前診断技術が洗練され誤診率が僅かになれば良いのかという問題でもない。どれだけ説明を尽くしても周産期の心身共に不安定な母親に胎児の命のオンオフボタンを渡す残酷さは拭えないとも思う。ある革新的な技術が生まれた時、使い方を十分吟味する前に使い始めないだけの辛抱ができる社会でありたい。2021/07/20
shigeki kishimura
12
"「わかっていたら中絶した」と断定せずに「中絶した可能性が高い」と訂正"するように母親がこだわった気持ちが痛いほどわかる。それはきっと私にも子供が産まれたからだろう。もし子供がいなかったら、その訂正へのこだわりは理解できなかったと思う。2021/04/12