内容説明
日本裏面史を「貫通」する公安警察小説!
昭和・平成の日本裏面史を「貫通」する公安警察小説!
かつて田中角栄邸を警備していた警察官・砂田修作は、公安へと異動し、時代を賑わす数々の事件と関わっていくことになる。
ロッキード、東芝COCOM、ソ連崩壊、地下鉄サリン、長官狙撃……。
それらの事件には、警察内の様々な思惑、腐敗、外部からの圧力などが複雑に絡み合っていた――。
圧倒的スケールで激動の時代の暗闘を炙り出す、前人未踏の警察大河ミステリー!
※この作品は単行本版として配信されていた作品の文庫本版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
94
月村さんらしい、実際の出来事をもとに仕上げた警察小説だった。主人公は警察官の砂田修作。公安部に配属され、昭和から平成の重大な事件をベースに、それぞれの世相を描いていくとても期間の長い物語だった。冒頭は1976年のロッキード事件。その後、東芝COCOM、ソ連崩壊、地下鉄サリン、國松長官狙撃等を俎上に挙げ語っていくが、その取材力の綿密さには舌を巻いた。扱われている事件は自分の記憶にすべてあり、時の経過を感じさせた。ただ小説として評価した時に、やはり史実の面白さにはかなわないなと感じたのが正直な気持ちだった。2021/04/24
シキモリ
25
ロッキード、ソビエト崩壊、地下鉄サリン、警察庁長官狙撃、金正男来日…。昭和・平成史にその名を轟かす重大事件を一人の公安警察官の生涯を通じて描き出す大河的警察小説で、およそ公安らしくない情動的な主人公が警察内部の泥試合に翻弄され、ひたすら負け続ける姿が暗鬱たる気分を誘う。ロシア人美女スパイとのロマンスは賛否が分かれそうだが、このくだりがないと重苦しくなり過ぎるので、評価が難しいところ。終章は主人公の独白という形式の憂国論だが、この失望感には強く同意せざるを得ない。著者の田中角栄に対する強い思い入れが印象的。2021/04/13
じゅむろりん
21
ロッキードからオウム関係のセンセーショナルな事件までと対峙する公安の砂田は、ロシアの関与を捜査していく中で、日本を揺るがす事件の裏側を覗き、捜査打ち切りを余儀なくされます。露スパイのクラーラに翻弄されても元部下で元妻の圭子から捜査を監視されても意地でしがみついてたのに、警察組織に起こった國松長官狙撃事件は根底を覆し、多くの公安の命を飲み込んでしまいました。昭和と平成について彼の目を通して、事件の裏と世相を読み解いていく感覚です。最後は映画タイタニックのダンスシーンを思い出しました。2023/05/26
くみこ
21
実在の事件を元にした警察小説。公安捜査員砂田の目を通して、有名事件の裏にあった外交問題や政治的駆け引き、保身に走る組織の内情が描かれます。ロッキード事件に纏わる前半は、各国のスパイの登場もあってスリリングでした。実はこんな裏が!という大胆なストーリーを期待してしまったので、後半は単なる事件史っぽくなったのが残念でした。物語の中心に田中角栄を据えた事で、熱い時代が終わった哀愁を際立たせています。良心に従い、警察官人生を全うした砂田の切なさも胸に迫りましたが、クラーラとの恋はいまいち。2021/06/22
たーさん
20
「機龍警察」シリーズが気になっていた月村さん。「警察の血」や堂場さんの「○○の刑事」シリーズとおなじ警察大河小説です。読み終わって大河小説、結構好きだなと思いました。主人公の公安刑事、砂田修作が公安部外事課に配属されてから定年を向かえた晩年まで公安時間に絡めながら辿るお話。正直、昭和の事件は知らない話が多く平成のオウム真理教事件や長官狙撃事件など記憶にある事件は面白かったです。警察上層部に翻弄され不遇の立場に追いやられながら警官の使命を全うしようとする砂田さんに心打たれました。2021/05/21