内容説明
南の島サイパンに渡った日本人たちの夢と絶望を、生存者の証言で描く労作。南洋開拓30年の夢と挫折の記録! ――南洋の島サイパンに「楽園」を求めて、夢と希望を託して海を越えた日本人たちがいた。厳しい自然と闘い、荒地を拓き、夢の新天地建設は着実に進む。だが、しのび寄る第二次世界大戦の暗雲は、サイパン島に生きる日本人を地獄の坩堝に突き落した! 知られざる南洋開拓民の30年史を、生存者の証言で綴る慟哭のドキュメント! 苦難の開拓と建設そして悲劇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
95
夫の父方祖父母は、山形からロタに移住した。私の舅はロタ生まれ。そんな戦前南洋に移住した人々に興味がある。野村さんが20代の全てをかけたこの本。サイパンで暮らす人々を情報のシャワーとドラマチックな筆で書く。もうホントこの人の文章好き。楽しさマックスのあたりが本の半分。後半、サイパンの南から米軍上陸。人々は北へ北へと逃げた。サイパンの北の果には何がある?そう、バンザイクリフである。ひとり一人を丁寧に書いたが為に、戦争が、人が死ぬと云うことが、他人事ではなく胸に迫る。もう一度違う目でサイパンを訪れたい。満足!!2022/08/22
遥かなる想い
93
日本統治領サイパンの三十年間の物語である。 日本からサイパンに移民した家族の苦闘の日々を描く。あまり知らなかった戦前から敗戦までのサイパンの情景が丹念に描かれる。 内地から 楽園を求めて 南の島へ向かった人々の過酷な運命が哀しい。2024/07/03
みなみ
14
同じ古書店で買ったサイパン関連の文庫を続けて読んだ。本作はサイパン移民の黎明期から敗戦に至るまでのドキュメント。夢のような勧誘から現地に行けば虫害、旱魃。移民の苦労はどの土地も苦難の連続だ。サイパンは沖縄からの移民が多く、そして沖縄出身者は差別されていた。差別は沖縄出身者だけでない。現地にもともと住んでいるチャモロ人が3等国民とされ、警察にいわれなく虐待される。サイパン戦についても詳しく、サイパン陥落後の収容所の様子も書かれる。日本が負けたことを信じないのはブラジルだけでなくサイパンも同じだったようだ…2021/12/27
Tatsu
3
戦前の日本領サイパンへ夢をかけた日本人たちの30年の歴史を丹念な取材で明らかにした労作、古書店でずいぶん以前に購入したままになっていたのをついに読了。戦争ですべてを失ってゆく開拓者たちの悲劇の物語。2005年に増補版として新たに「日本領サイパン島の一万日」が出版された。こちらはまだ未読ですが読んでみたい。2012/09/20