内容説明
今、教育の現場で問題となっている、教科書で教えない性教育、セクシュアリティ教育、ジェンダー教育、LGBT問題に一石を投じた書。本書は、学校での性教育の役割が子どもの安全基地の確保となるために必要なものは何かを、さまざまな意見聴取や対話から明らかにしたもの。いま全国の高校では、文科省通達に従って保健や家庭科の科目の中で「性教育」を行っている。しかし教科書に沿って行われる「性教育」は、単なる避妊教育だったり、禁欲教育だったりして、「性」の最も重要な部分である人間の尊厳や、日々の暮らしでの自由と自立と「性」との関係について踏み込めていない。それは「性教育」に携わる現場の教員が痛切に感じていることである。試行錯誤を続けている教員から出てきた問いは五つ。①なぜ「性教育」が必要なのか、②セクシュアリティ教育が目指すもの、③生徒に何を伝えたいか、④生徒は何を知りたいか、⑤生徒の個人差について――これらの問いに答えるために、本書では、「学歴」とともに分断二大要素の一つである「性」にフォーカスし、それを三つの視点から、「性の教育で必要なこと」(一つ目は学校で行われている文科省通達の「性教育」とそれに携わる現場教師の奮闘を座談会形式で、二つ目は助産師の語る性「出産と赤ちゃん」について、三つ目はLGBTQに関わる「性スペクトラム」について)を論じて見えてきた、子どもの成長に重大な影響を及ぼす「性教育」の在り方を浮き彫りにし、教科書では教えない、性教育の正しい知識とは何かを明らかにした書。今、教育の現場で問題となっている、セクシュアリティ教育、ジェンダー教育、LGBT問題に一石を投じた意欲作。
目次
まえがき
第一章 セクシュアリティ教育は何を目指しているのか――性教育に携わる現役教師・助産師・カウンセラー・学生の座談会
[座談会]第一部 「性教育」には教員の姿勢が反映する
◎性教育の二つの流れ
◎「自分はいったい何者なのか」――教師自身もかつて抱いた問いを思い返して接する
◎社会が変わると子どもも変わる――発達特性を持っている子どもの思春期
◎LGBTQも性教育の一環として行う
◎「ジェンダーの授業」では、受けとめる生徒の意識の差が著しい
◎文科省は授業でお産の動画や写真を見せることを禁止している
◎性についての知識の個人差が大きい。性の知識がまったくない大学生もいる
◎高校生みずからがタブー視して目を逸らしている
◎教師が伝えたいのは「きみはきみでいいんだよ」ということ
◎すべての生徒がいとおしい――だからこそ性教育は大事
◎性の授業は生徒の内面深くまで浸透する
◎卒業後に訪ねてきた生徒
◎〈女子・男子〉ではなく〈女体持ち・男体持ち〉という視点の転換
◎安心して性の話ができる場があるとよい
◎生徒がその都度、教師を選んで受講するというアイデア
[座談会]第二部 性の授業の進め方
◎文科省の方針と教育現場の乖離
◎コンドームを授業で見せるのは禁止されている
◎自分の身を守るためには、性の知識が必要
◎生物では「発生」、社会では「ジェンダー」、国語では「恋文」―性教育は教科でも関連付けられる
◎包括的な性教育には安全・安心な場が必要
◎性教育は教員の生き方がまるごと問われてしまう
◎カミングアウトして社会で活躍している人をモデルにできるか
◎性教育を通して女性への尊敬が生まれた
[座談会]第三部 生きるのがラクになる新しい性のあり方
◎キャラクターと結婚するZ世代の若者
◎結婚と性と家庭は、社会的約束事にすぎない
◎性自認にはグラデーションがある
◎小学校はそもそも国家のために創設された
◎就職先としての「結婚」が弱体化している
◎性自認さえ超えた存在が登場
◎DNAのオン・オフが関係している?
【コラム 書評】 『オキシトシンがつくる絆社会―安らぎと結びつきのホルモン』
第二章 「胎児」から「赤ん坊」へ――助産師・大石恵子に聞く出産を巡るあれこれ
一、胎児はずっと夢を見ている
◎性別がわかるのは10週目、胎児は5センチくらい
◎胎児はレム睡眠状態――つまり夢を見ている
◎子宮の胎児に直接触れる内診
二、助産師・大石恵子さんへのインタビュー
◎まず「内診」の話から
◎内診するとその人の人生がわかる
◎杉山富士子助産師は内診の名人
◎「役者」に徹して徹底的に産婦さんを褒める
◎ナースコールを握りしめていた産婦
◎分娩台にいるときは、何かやることがあるのが大事
◎伝説の助産師・三森孔子
【コラム 三森孔子(みもり・よしこ)】
◎重力の力を借りたアクティブ・バース
◎産婦さんに意識の方向性を示すと内省的なお産になる
◎胎児に個性はあるか――おなかの中からポコンと蹴って意思を伝える
◎においで分娩の時期がわかる
◎胎児の意識を感じることはあるか
◎性交渉なしで子どもが生まれるか
【コラム 書評】 『存在しない女たち 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』
第三章 性スペクトラム――性は再定義する必要がある
一、性スペクトラム――生殖器のかたちは個々人によって違う
二、性は定義しなおさなくてはならない
三、エインズワースの「性の再定義」
(一)Y染色体を持っていた女性
(二)セックスすると男性の遺伝子が女性に移動する
(三)子宮を持っている男性
四、人間の性は女性がデフォルト(基準)ではない
五、「男なんじゃないか」と疑われたキャスター・セメンヤ選手
六、両性具有という新しい性
七、死後、両性具有が判明したステラ・ウォルシュ選手の場合
八、遺伝子多様性と遺伝子修復
九、単為生殖というサバイバル
一〇、性決定は環境にお任せするワニやカメ
一一、性転換するカクレクマノミのサバイバル
一二、種存続の武器としての性
【ネコとイルカのワイワイ読書会】『心を病んだらいけないの? うつ病社会の処方箋』(與那覇潤×斎藤環共著、新潮選書、2020年)をワイワイと読んでみた
◎うつ病で休職中の教師は病気休職者の67%を占めている
◎「都会のハローワークで多様性にほっとした」に共感
◎リワークデイケアとひとぐすり(人薬)
◎病気に対する自分の姿勢が変わる
◎うつ病は「炭鉱のカナリア」
【無料塾ココロの実践報告と展望】 コロナ後の無料塾のあり方――集中を習慣化する力
◎子どもの時間を分断してはならない
◎集中力を習慣化する方法
◎皆勤で高校を卒業した受講生
――イルカ(公認心理師)の教育相談
【相談1:高校2年のときに高校を中退し引きこもっている息子が「大学に行きたい」と希望しています】
【相談2:HSP(繊細な子)の中学生の娘にどう対応すればよいでしょうか】
編集後記
◇参考文献
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- 電子書籍
- どうする? 家族のメンタル不調 集英社…
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- 電子書籍
- 小さな命と秘めた恋【分冊】 4巻 ハー…
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- 電子書籍
- 国王の許されぬ愛人【分冊】 12巻 ハ…
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- トスカーナの花嫁【分冊】 4巻 ハーレ…
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- 電子書籍
- うさひよ(1) 月刊コミックアヴァルス