内容説明
世界の叡智であるラッセル自身が体現した「幸福の獲得法」をわかりやすく解説。
ラッセルはいう。「幸福な人とは、客観的な生き方をし、自由な愛情と広い興味を持っている人である。それゆえに自分がほかの多くの人びとの興味と愛情の対象にされるという事実を通して、幸福をつかみとる人である」。そういう人になるためには何をすべきなのか。ひきこもり・フリーターの経験を持つ哲学者が、日本人の内面にあわせて哲学的エッセイ『幸福論』をわかりやすく解説する。著者は原書の魅力を「ラッセル自らが幸福になるために実践したことを論理的・理性的に綴っていること」と「個人の幸福がひいては社会の幸福の基盤である平和につながることを示したこと」にあるという。数学者でもあったラッセルの合理性とリアリティが、読む者に確かな納得と、不幸を克服するための具体的な実践法を与えるのだと。書下ろしのブックス特別章では、ラッセルの幸福を希求する態度の現代的な意味と、貧困や人種問題、コロナ禍といった今日的「不幸」に対して彼の叡智が有効であることを詳述、いまを生きる私たちに響く解説を展開する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
34
地元図書館新刊棚より。幸福な人とは、客観的な生き方。自由な愛情と広い興味(表紙見返し)。幸福とは自ら獲得すべき能動的な営み(006頁)。不幸の原因は競争。競争重視で家族をもつ幸せが犠牲に(026頁)。日本の少子化も競争重視が結果的に影響していると思う。天は二物を与えず、ではなく、有能なものはいくつも所有し、無能な者はひとつの取柄もない。私も無能で不幸だ。博士号の有無で最初から応募を拒否る大学も増えた。それ自体、差別で人を不幸にしている。2021/07/23
としま
7
不幸の原因は自分の内に引きこもる、自己没頭。自分の情熱と興味を外に向けることで客観的に生きることが幸福になるために必要。退屈の反対は快楽でなく、興奮。退屈に耐える力も必要。比較することで妬みが生まれる。逆に賛美することで妬みを解消する。目の前のことを目一杯楽しむ。趣味、広い興味をもつ。2025/01/02
最早
4
面白かった。次は普通の翻訳版を読もうと思う。悲観主義や競争、疲れ、妬み、世評への怯えなど、自分も当てはまる部分が多く、色々気づかされた。平和への熱い思いにも心を動かされたし、自分も宇宙の住人という意識で生きていきたい。2023/12/09
らる
4
自分が一番望んでいるものを発見。望んでいるもののいくつかを「本質的に手に入らない」として上手に捨てる。自分の欠点に無関心になる。注意を外界の事物に向ける/不幸最大の原因は自己没頭/心配から来る疲れが人を不幸にする/退屈を味わえる人になること/ねたみの本質は他との関係においてみること。比較すること。謙遜する人はねたみを持ちやすい/人の意見を尊重しすぎていると幸福にはなれない/興味の幅をできる限り広くせよ/仕事を面白くする要素は「技術の行使」と「建設性」/趣味をもち、「世界を広く」みること2023/05/07
Masaki Iguchi
2
★原著を噛み砕いて解説してくれる副読本。★ラッセルの思想を「究極のポジティブシンキング」と表現するのは言い得て妙だと思った。生き方そのものがポジティブでエネルギッシュだもんなぁ。★ラッセルの後半生について触れられているのもよかった。★興味のあるところから、少しずつ外に向かっていこうと思う。2022/04/04