内容説明
本書は、著者自身が開設した精神病院における50年間の自殺例をすべて洗い出し、彼・彼女らはなぜ自殺しなければならなかったのかを精緻に分析したものである。患者さんは死によって何を訴えたかったのか? 自殺した統合失調症圏、躁うつ病圏、境界例など47人の背景、状況の綿密な調査・分析によって、それぞれの事例が自殺防止のための有益な手がかりを与えてくれる。また、後半では、地方都市の精神病院という一定点から見続けた精神科医療の過去半世紀の変化と著者自身の地域精神科医療の歩みが興味深く紹介される。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
17
50年近く富山の小規模精神科病院で精神科医として働いてきた著者が、自らの精神科医としての仕事を振り返ったとき、残るのは自殺した患者たちのことだった。多くの事例と、精神病、人格障害との関連と、時代の変遷との関係までも丁寧に語った内容。濃いです。自殺とはなにか、精神科医療の歴史についても章があり、そちらも読み応えあります。2020/10/28
azu3
3
ベテラン精神科医の著者が、自身が経営する病院で過去50年間の自死を振り返ってまとめたものと、専門誌に掲載されたエッセイの二本立て。後者がたいへん興味深かった。歴史的なことはすでに周知のものでも、その近くで見てきた著者の話は、やはり面白い。2020/08/16
Go Extreme
0
自殺を考えている段階:準備因子 自殺決行:結実因子 年間三万人超え:平成の自殺急増期 職場環境変化とうつ病の問題→自殺 職場・企業と自分の過度の同一化 新・自殺予備群:孤立・過重労働・社会的格差 かかりつけ医と精神科医連携 デュルケーム:社会固有の自殺死亡率 自然と調和した心豊かな暮らし→安くていいもの・便利で快適なもの フロイト・死の本能論 社会的事実:物のように考察 3種の自殺:自己本位的・集団主義的・アノミー的自殺 過重労働と自殺:過重労働→疲憊→うつ的気分→希死念慮→生死の臨界点→孤立→自殺決行 2020/10/27