内容説明
少女の成長を描くイタリアのベストセラー。
13歳の時にそれまで育った裕福な家庭から、実の親と兄妹が暮らす田舎の貧しい家庭に突然戻されてしまった「わたし」。大人の都合に翻弄され、あまりに違う環境に戸惑い、寄る辺の無さに悩みながらも、実の妹という理解者と共に成長し、やがて大人を乗り越えていこうとする少女の姿を描く感動作。イタリアで二大文学賞のひとつカンピエッロ賞を受賞、28か国に翻訳され、映画化も進行しているベストセラー。
(2021年3月発行作品)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
71
家庭とは、子どもにとって一番安らげる場所、信じられる場所だ。そして、その中心にいるのが母親だといってもいいだろう。なのに、その家庭も、母親さえも、信じられないものだったとしたら、子どもは、何を信じ、何を心の拠り所にしたらいいだろう。とはいえ、その家庭、決して磐石なものではない。大人の事情で、変化したり、簡単に壊れたりする。なのに、その中にいる子どもは、何も知らなかったりする。自分が知らないうちに、勝手に自分のことをやりとりする親たち。そこには、いろんな事情があるのは確かだろう。だが、子どもは、ものではない2021/09/26
ナミのママ
64
イタリア・カンピエッロ賞ほか受賞。1975年、13歳のわたし。裕福な家庭からいきなり田舎の貧しい大家族に引き渡される。そこが本当の両親と兄弟のいる家族の家だった。…環境の違い、生活の違いに戸惑い、いつか迎えに来てくれる事を疑わない姿が痛ましい。やがてモノのようにやりとりをした両方の母に怒りを覚える。おそらく日本の田舎でもこの年代には似たような事があったのだろうと想像しながら読む。揺れ動きながら成長し、次第にたくましくなっていく姿に思わず応援してしまう。次作も発売されたそうなので翻訳を待ちたい。2021/04/18
きょん
60
13歳の「わたし」がある日突然本当の家族の許へ戻される。中流家庭と貧困家庭の落差に戸惑い、実母と養母の間で葛藤するわたし。また以前の優しい母の所に戻れる日を信じて待つわたしの心の叫びになぜなぜと一緒に問う私がいる。大人たちが必死に隠していた事実が明らかになった時、時代の残酷さや抑圧された女性という言葉が頭の中を駆け巡った。2021/06/08
ヘラジカ
59
新しい環境と家族に対する適応と交流、育ての母親への思いなど、シンプルながら細やかに描かれた成長物語である。貧乏とは言えあまり過酷な経験はせず、優しさに溢れた人間関係ばかりなのに、虚しさと孤独感が隙間風のように寒々と吹き込んでいるような印象を受けた。感情の機微を描くのが非常に巧い。なんとなく作者の自伝的な小説なのかと思っていたが、後書きを読むとどうやらそうではないらしい。物語としては率直すぎる部分もあり、終わり方も含めてやや物足りなさも感じたものの、個性的で優しい妹との絆や両親の不器用な愛情は胸に響いた。2021/04/02
タツ フカガワ
51
海辺の町でなに不自由なく育った13歳の娘はある日母親から、生みの親の元へ戻るよう言われる。少女はそこで初めて自分が養女だったことを知る。山間の村にある貧しいアパートには実の両親のもとに三人の兄と妹と弟がいた。初めて読むイタリア小説は感動ものの一冊でした。二人の母親の間でよりどころを見つけられない少女の苦悩や、妹と絆を深めていく様子を描く瑞々しい文章(翻訳も)がたびたび胸を震わせる。読了後に改めてカバーを見ると再び目が潤んできました。続編もぜひとも邦訳を出していただきたいものです。2021/05/19
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