内容説明
一般的に、保守思想と自由主義(リベラリズム)は水と油のように相容れないとみなされる。しかし本来、正しい「保守」であれば自由主義を擁護するし、本物のリベラルであれば「保守」たらざるをえない。本書では、デヴィッド・ヒューム、福澤諭吉、フランク・ナイトという三つの偉大な知性を召喚し、歴史の転回点に立った彼らが、近現代世界の黎明期に見出した共通の主題「保守的自由主義」を抽出する。彼らが追究した思考を追体験することで、同じく歴史の転回点に立つ私たちが、二元論に惑わされずに保守思想の本質にたどり着くための道筋をさぐる。
目次
はじめに 保守思想とは? 保守的自由主義とは?
第一部 健全な懐疑主義
第一章 ヒュームと健全な懐疑主義
1 ヒュームの懐疑とピュロンの懐疑
2 感性の進化と可謬性の認識に基づく批判精神
3 人間現象moralsをめぐる感性の進化と動態的バランス感覚(批判精神)
第二章 福澤諭吉と健全な懐疑主義
1 福澤諭吉と動態的バランス感覚
2 惑溺と怨望
3 堪忍と寛容
4 文明の精神と自由の気風
第三章 フランク・ナイトと健全な懐疑主義
1 フランク・ナイトとは誰か
2 『リスク、不確実性および利潤』と健全な懐疑主義
3 不確実な将来の予測のための分析と総合──主観的確率判断
4 不確実性に対処する主観的確率判断と自由企業という社会システム
5 「自由な人間の判断」への信頼と懐疑
第二部 法の支配
第一章 ヒュームと権力平均としての法の支配の観念
1 はじめに
2 制限君主制と法の支配
3 共和制と法の支配
第二章 福澤諭吉における法の支配と権力平均の主義
1 権力の平均と立憲主義
2 徳川の治世と権力平均の主義
3 官民調和論と権力平均の主義
4 『国会の前途』と権力平均の主義
第三章 ナイトの法の支配とゲームのルールの観念
1 はじめに
2 法の支配と「自由主義革命」
3 ナイトの「ゲームのルール」の支配
第三部 政治的知性
第一章 政治的知性の観念
第二章 ヒュームと政治的知性の観念
1 『イングランド史』における政治的知性
2 アルフレッド大王の政治的知性
3 エリザベス一世の政治的知性
4 保守的自由主義者は政治的知性を説くべきか?
第三章 福澤諭吉と政治的知性(公智)について
1 福澤諭吉と徳川家康
2 徳川家康の政治的知性
3 保守的自由主義と政治的リアリズム
第四章 ナイトの政治的知性の観念について
1 政治的知性と倫理的知性
2 知性と自由企業について
3 倫理的知性と自由な民主政治について
4 倫理的知性教育
5 倫理的知性と責任
おわりに 法の支配と政治的知性と市民の倫理的知性
参考文献
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