内容説明
米スタンフォード大で白人水泳選手が起こした性暴力事件。被害者は何と闘い、何に怯え、何に勇気づけられたのか? 全世界に性暴力の真実を教え、その考え方を決定的に変えた衝撃の回顧録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃちゃ
108
性暴力の被害に遭った著者が実名を公表するために、どれほどの勇気と決意が必要だっただろう。“あの日”から彼女は匿名の被害者となり、穏やかな日常は奪われ、恐怖と苦悩と恥辱と孤独にまみれた非日常の日々が押し寄せる。裁判の過程はあまりにも苛酷で、個人の尊厳を剥奪し、膨大な時間と巧妙な手段で彼女の体と心を極限まで追い込む。読みながら何度も強く憤り、目頭が熱くなった。「すべての女の子たちへ。私はあなたがたと共にいます」彼女は強くなろうと奮い立つ。声を上げることで自らの誇りを取り戻し、新しい歴史を作ってゆくために。2021/08/02
syaori
67
レイプ事件の被害者が事件や裁判を振り返った本。彼女が語るのは「被害者が安全、正義、回復を期待できるシステム」が存在していないという現実や「男子は自制できない」を容認する巨大で根強い男性優位の思想。彼女も不条理な裁判制度や弁護人の質問、理不尽な報道に何度も直面し、こちらも苦しくなるほど。でもその中で、こんな苦痛は自分で最後にしたいから闘うのだという答えを掴み、全ての被害者に「あなたには価値がある」と伝えるために紡ぐ彼女の言葉は、社会を変えていければという力に満ちていて、大きな勇気をもらったように思いました。2022/04/27
ヘラジカ
56
本を手に取るのを躊躇いそうになる度、「あなたは配信をオフにして、見たいものだけ見られる。この経験をしたくないって言う選択肢、私にはないんだよ」との言葉が突き刺さった。彼女自身の経験だけでも読むのが苦しくなるくらいだったが、この事件はたまたま注目される要素を持ち、被害者が声を持てたというだけで、同質かそれ以上の地獄を体験した人が膨大な数存在することを考えると、湧き上がる感情に対処できなくなる。どう考えても不当な量刑にも「正義の実現という点では、最も恵まれたところにいた」と言わせてしまう世界。圧倒された。2021/03/07
ネギっ子gen
38
【Still waters run deep】静かなる憤怒の書。2015年の米スタンフォード大で、シャネル・ミラーを襲った性暴力事件。自身の身体に残された傷跡、現場から逃亡しようとした加害者、それを阻止した目撃者の存在から、犯行は疑いのないものだった。なのに、事件後も苦痛に満ちた闘いの日々が続くことに――。事件後、彼女にはエミリー・ドウという仮名が与えられる。身元を隠すため。それでも、性暴力のサヴァイヴァーはセカンドレイプにあう。裁判で、ネットで。それらにも負けずに、彼女は本書を執筆し、名前も公表――。⇒2022/03/06
信兵衛
29
こうした事件で闘い続けることは、被害者の女性にとってどれほど過酷なものであるかは、本書を読めばわかります。 でも闘うことによって、世界を変えることもできるのだ、と私たちは知るべきなのでしょう。2021/05/26