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内容説明
約三〇年前、ソ連・東欧の社会主義政治体制は崩壊した。議会制=ソヴェト制の外観の下、一党制または事実上の単一政党制を採用していた国々は、複数政党制を前提とする新しい政治体制への転換を迫られた。以来現在まで、これらの国々では幾度となく政治体制の変更が行われ、それは時に暴力を伴う。この政治体制のダイナミックな変化を理解する鍵となるのが、ポスト社会主義圏に多く見られる「準大統領制」というシステムである。地政学的対立とポピュリズムに翻弄されたソ連崩壊後の三〇年を、大統領・議会・首相の関係から読み解く。
目次
序章 準大統領制とは何か
旧社会主義国に広がる準大統領制
準大統領制の三類型
首相任命権と解任権
五つの制度とその間の移行
準大統領制をプリズムとして政治の動態を見る
転機としての二〇〇八年
第一章 共産党体制からの移行のロードマップ
1 社会主義体制からの連続的な移行
(ルート1)大統領議会制へのスムーズな移行
共産党第一書記から最高会議議長へ
最高会議議長から大統領へ
(ルート2)議会制へのスムーズな移行
2 迂回的移行と逸脱
(ルート3)大統領議会制への迂回的移行
(ルート4)高度大統領制化準大統領制、大統領制への逸脱
団結誇示か、「勝者総取り」か
(ルート5)首相大統領制へのいくつかの道
(ルート6)権力分散的準大統領制の定着
第二章 ポーランド──首相大統領制の矛盾
1 ポーランドの概況
問われる公選大統領の意義
政党制と選挙制度
2 流産した漸進的民主化
一九八九年円卓会議
議会大統領制の導入
「連帯」の大勝
3 ポーランド・ポピュリズムの起源
一貫した二大政党制
「連帯」の分裂と中道連盟の誕生
議会大統領制から準大統領制へ
一九九〇年大統領選挙──ワレンサの勝利
ビエレツキ政府──カチンスキ兄弟の離反
一九九一年完全自由議会選挙
オルシェフスキ政府──ワレンサとカチンスキの闘争
癒しのスホツカ政府
一九九三年議会選挙における左翼の復活
一九九五年大統領選挙──どん底で見えた右派の勝機
4 首相大統領制に至る憲法過程
九二年「小憲法」から九七年憲法へ
各憲法における機構論
首相大統領制と建設的不信任制度
首相大統領制を支持する学説
「法と正義」の憲法試案
5 二大政党制の再編
ブゼク政府の無能とクワシニェフスキの再選
市民プラットフォームと「法と正義」の誕生
不人気なミレル政府
二〇〇五年選挙──「法と正義」の勝利
二〇〇七年議会選挙──「第四共和国」の挫折
コアビタシオンと外交
政府機の墜落と二〇一〇年大統領選挙
6 ポピュリズムの第三の波
二〇一五年選挙サイクル
首相大統領制に埋没しないドゥーダ
ポーランドのまとめ
第三章 リトアニア──首相大統領制とポピュリズム
1 リトアニアの概況
リトアニア大公国の後継者
リトアニア政治の対立軸
2 まず憲法、そののち首相大統領制
サユディスの大勝とランズベルギス議長
サユディスの分裂と九二年憲法
大統領議会制か首相大統領制か不分明な憲法
左右軸と既成政党批判
一九九八年の憲法裁判所決定
クーリスによる批判
3 首相大統領制下での大統領の自立性
保守党内の派閥操作
大統領の連立政治
パクサス弾劾──公選大統領の倫理的基礎
4 ポピュリズムとグリバウスカイテ時代
EU加盟と経済苦境
ディープステート疑惑と保守党の政権復帰
グリバウスカイテの登場
政治哲学とリーダーシップ
第二期アダムクス、グリバウスカイテの歴代首相との関係
二〇一六年選挙における農民・緑連合の躍進
社会民主党の分裂
リトアニアのまとめ
第四章 アルメニア──一党優位制と強い議会の結合
1 アルメニアの概況
被害者としての自己イメージ
カラバフ閥と、それへの反感
下からの革命とエリートの断絶
2 カラバフ戦争と高度大統領制化準大統領制
カラバフ運動の始まり
テル‐ペトロシャンの台頭
九一年大統領法
九五年憲法の制定過程
3 首相大統領制へのデファクトな移行
一九九五─九六年選挙サイクル──「不正選挙」言説の始まり
テル‐ペトロシャンの失脚
一九九八─九九年選挙サイクルと政党制の発達
準コアビタシオンと議会テロ
二〇〇三年選挙と連立政治
憲法を現実に追いつかせる
4 二〇〇五年憲法下での首相大統領制と一党優位制
予備選挙としての二〇〇七年議会選挙
大統領選挙へのテル‐ペトロシャンの参入
実態においては大統領議会制
二〇一二─一三年選挙サイクル──サルキシャンの無難な再選
5 議会制への移行と革命
二〇一五年の憲法改正
与党に有利な選挙法典
四月革命とその後
アルメニアのまとめ
第五章 ウクライナ──権力分散的準大統領制
1 ウクライナの概況
東西対立論の虚実
コメコン経済圏の中心
2 九六年憲法に至る紆余曲折
クラフチュクと高度大統領制化準大統領制
クチマ首相下での準大統領制への接近
九五年「憲法合意」
定着しなかった高度大統領制化準大統領制
抑制均衡を欠いた九六年憲法
3 議会寡頭制の成長と二〇〇四年憲法改正
憲政の停滞
ユシチェンコを支持する議会多数派
「クチマ抜きのウクライナ」運動
二〇〇二年議会選挙──ユシチェンコの勝利
クチマの先制的憲法改正案
オレンジ革命と二〇〇四年憲法改正
憲法改正手続きの侵犯
4 首相大統領制とユシチェンコ時代
大統領─首相間の競合の恒常化
オレンジ・反オレンジの構図の融解
アイデンティティ問題への争点すり替え
ユシチェンコの改憲の試み
5 旧憲法の復活とユーロマイダン革命
二〇一〇年憲法裁判所決定とヴェニス委員会
煮え切らない憲法改正議論
ユーロマイダン革命と二〇〇四年憲法の復活
内戦と事実上の大統領議会制
ウクライナのまとめ
第六章 モルドヴァ──議会大統領制から準大統領制への回帰
1 モルドヴァの概況
指導者の無能による多元主義
モルドヴァ国家のアイデンティティ
2 欧州評議会の援助による首相大統領制の導入
付かず離れずのスネグルと人民戦線
沿ドニエストル紛争と人民戦線の後退
一九九四年議会選挙──農民民主党の勝利
九四年憲法の採択
3 議会制への移行
ルチンスキ大統領と議会の対立
高度大統領制化準大統領制を提案
二〇〇〇年の憲法改正
共産党の活発さと議会主義
ヴォロニン時代(二〇〇一─〇九年)
二〇〇九年の暴力的政変
4 大統領の空白からプラホトニュク一極支配へ
二〇一〇年国民投票
親欧諸党の実態と「世紀の窃盗」
二〇一四年議会選挙──社会党の勝利
サンドゥの台頭
憲法裁判所決定による準大統領制の復活
二〇一六年大統領選挙
5 三党鼎立
二〇一九年議会選挙
左右大連立によるプラホトニュク体制の打倒
大連合の崩壊と二〇二〇年大統領選挙
モルドヴァのまとめ
終章 地政学的対立とデモクラシー
政党制と準大統領制
抑制均衡か、権力分立か
表見的な首相大統領制
国境を越える憲法過程
地政学的対立とポピュリズム
あとがき
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巨峰
壱萬弐仟縁
Ex libris 毒餃子
Porco
ふぁきべ