ちくま新書<br> ポスト社会主義の政治 ――ポーランド、リトアニア、アルメニア、ウクライナ、モルドヴァの準大統領制

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ちくま新書
ポスト社会主義の政治 ――ポーランド、リトアニア、アルメニア、ウクライナ、モルドヴァの準大統領制

  • 著者名:松里公孝【著者】
  • 価格 ¥1,045(本体¥950)
  • 筑摩書房(2021/03発売)
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  • ISBN:9784480073808

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内容説明

約三〇年前、ソ連・東欧の社会主義政治体制は崩壊した。議会制=ソヴェト制の外観の下、一党制または事実上の単一政党制を採用していた国々は、複数政党制を前提とする新しい政治体制への転換を迫られた。以来現在まで、これらの国々では幾度となく政治体制の変更が行われ、それは時に暴力を伴う。この政治体制のダイナミックな変化を理解する鍵となるのが、ポスト社会主義圏に多く見られる「準大統領制」というシステムである。地政学的対立とポピュリズムに翻弄されたソ連崩壊後の三〇年を、大統領・議会・首相の関係から読み解く。

目次

序章 準大統領制とは何か
旧社会主義国に広がる準大統領制
準大統領制の三類型
首相任命権と解任権
五つの制度とその間の移行
準大統領制をプリズムとして政治の動態を見る
転機としての二〇〇八年
第一章 共産党体制からの移行のロードマップ
1 社会主義体制からの連続的な移行
(ルート1)大統領議会制へのスムーズな移行
共産党第一書記から最高会議議長へ
最高会議議長から大統領へ
(ルート2)議会制へのスムーズな移行
2 迂回的移行と逸脱
(ルート3)大統領議会制への迂回的移行
(ルート4)高度大統領制化準大統領制、大統領制への逸脱
団結誇示か、「勝者総取り」か
(ルート5)首相大統領制へのいくつかの道
(ルート6)権力分散的準大統領制の定着
第二章 ポーランド──首相大統領制の矛盾
1 ポーランドの概況
問われる公選大統領の意義
政党制と選挙制度
2 流産した漸進的民主化
一九八九年円卓会議
議会大統領制の導入
「連帯」の大勝
3 ポーランド・ポピュリズムの起源
一貫した二大政党制
「連帯」の分裂と中道連盟の誕生
議会大統領制から準大統領制へ
一九九〇年大統領選挙──ワレンサの勝利
ビエレツキ政府──カチンスキ兄弟の離反
一九九一年完全自由議会選挙
オルシェフスキ政府──ワレンサとカチンスキの闘争
癒しのスホツカ政府
一九九三年議会選挙における左翼の復活
一九九五年大統領選挙──どん底で見えた右派の勝機
4 首相大統領制に至る憲法過程
九二年「小憲法」から九七年憲法へ
各憲法における機構論
首相大統領制と建設的不信任制度
首相大統領制を支持する学説
「法と正義」の憲法試案
5 二大政党制の再編
ブゼク政府の無能とクワシニェフスキの再選
市民プラットフォームと「法と正義」の誕生
不人気なミレル政府
二〇〇五年選挙──「法と正義」の勝利
二〇〇七年議会選挙──「第四共和国」の挫折
コアビタシオンと外交
政府機の墜落と二〇一〇年大統領選挙
6 ポピュリズムの第三の波
二〇一五年選挙サイクル
首相大統領制に埋没しないドゥーダ
ポーランドのまとめ
第三章 リトアニア──首相大統領制とポピュリズム
1 リトアニアの概況
リトアニア大公国の後継者
リトアニア政治の対立軸
2 まず憲法、そののち首相大統領制
サユディスの大勝とランズベルギス議長
サユディスの分裂と九二年憲法
大統領議会制か首相大統領制か不分明な憲法
左右軸と既成政党批判
一九九八年の憲法裁判所決定
クーリスによる批判
3 首相大統領制下での大統領の自立性
保守党内の派閥操作
大統領の連立政治
パクサス弾劾──公選大統領の倫理的基礎
4 ポピュリズムとグリバウスカイテ時代
EU加盟と経済苦境
ディープステート疑惑と保守党の政権復帰
グリバウスカイテの登場
政治哲学とリーダーシップ
第二期アダムクス、グリバウスカイテの歴代首相との関係
二〇一六年選挙における農民・緑連合の躍進
社会民主党の分裂
リトアニアのまとめ
第四章 アルメニア──一党優位制と強い議会の結合
1 アルメニアの概況
被害者としての自己イメージ
カラバフ閥と、それへの反感
下からの革命とエリートの断絶
2 カラバフ戦争と高度大統領制化準大統領制
カラバフ運動の始まり
テル‐ペトロシャンの台頭
九一年大統領法
九五年憲法の制定過程
3 首相大統領制へのデファクトな移行
一九九五─九六年選挙サイクル──「不正選挙」言説の始まり
テル‐ペトロシャンの失脚
一九九八─九九年選挙サイクルと政党制の発達
準コアビタシオンと議会テロ
二〇〇三年選挙と連立政治
憲法を現実に追いつかせる
4 二〇〇五年憲法下での首相大統領制と一党優位制
予備選挙としての二〇〇七年議会選挙
大統領選挙へのテル‐ペトロシャンの参入
実態においては大統領議会制
二〇一二─一三年選挙サイクル──サルキシャンの無難な再選
5 議会制への移行と革命
二〇一五年の憲法改正
与党に有利な選挙法典
四月革命とその後
アルメニアのまとめ
第五章 ウクライナ──権力分散的準大統領制
1 ウクライナの概況
東西対立論の虚実
コメコン経済圏の中心
2 九六年憲法に至る紆余曲折
クラフチュクと高度大統領制化準大統領制
クチマ首相下での準大統領制への接近
九五年「憲法合意」
定着しなかった高度大統領制化準大統領制
抑制均衡を欠いた九六年憲法
3 議会寡頭制の成長と二〇〇四年憲法改正
憲政の停滞
ユシチェンコを支持する議会多数派
「クチマ抜きのウクライナ」運動
二〇〇二年議会選挙──ユシチェンコの勝利
クチマの先制的憲法改正案
オレンジ革命と二〇〇四年憲法改正
憲法改正手続きの侵犯
4 首相大統領制とユシチェンコ時代
大統領─首相間の競合の恒常化
オレンジ・反オレンジの構図の融解
アイデンティティ問題への争点すり替え
ユシチェンコの改憲の試み
5 旧憲法の復活とユーロマイダン革命
二〇一〇年憲法裁判所決定とヴェニス委員会
煮え切らない憲法改正議論
ユーロマイダン革命と二〇〇四年憲法の復活
内戦と事実上の大統領議会制
ウクライナのまとめ
第六章 モルドヴァ──議会大統領制から準大統領制への回帰
1 モルドヴァの概況
指導者の無能による多元主義
モルドヴァ国家のアイデンティティ
2 欧州評議会の援助による首相大統領制の導入
付かず離れずのスネグルと人民戦線
沿ドニエストル紛争と人民戦線の後退
一九九四年議会選挙──農民民主党の勝利
九四年憲法の採択
3 議会制への移行
ルチンスキ大統領と議会の対立
高度大統領制化準大統領制を提案
二〇〇〇年の憲法改正
共産党の活発さと議会主義
ヴォロニン時代(二〇〇一─〇九年)
二〇〇九年の暴力的政変
4 大統領の空白からプラホトニュク一極支配へ
二〇一〇年国民投票
親欧諸党の実態と「世紀の窃盗」
二〇一四年議会選挙──社会党の勝利
サンドゥの台頭
憲法裁判所決定による準大統領制の復活
二〇一六年大統領選挙
5 三党鼎立
二〇一九年議会選挙
左右大連立によるプラホトニュク体制の打倒
大連合の崩壊と二〇二〇年大統領選挙
モルドヴァのまとめ
終章 地政学的対立とデモクラシー
政党制と準大統領制
抑制均衡か、権力分立か
表見的な首相大統領制
国境を越える憲法過程
地政学的対立とポピュリズム
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

巨峰

39
21世紀の政治史になるとなじみのない名前の羅列ばかりと感じ、読み通すのは門外漢としてはくるしい。2022/04/26

壱萬弐仟縁

30
新刊棚より拝借。異国の政治体制、門外漢にはなじみ薄。新書というより専門書。旧社会主義国に広がる準大統領制。国民が選挙で選ぶ大統領と、首相が併存する体制(012頁)。仏政治学者モーリス・デュヴェルジェ(014頁)。ポーランドのポピュリズムはカトリック教会の社会理論に起源(067頁)。ポーランドは、農業集団化が行われず、自営農家が社会主義の最後まで保持された稀な国(083頁)。アルメニアは、下からの民族民主革命を経験したために、共産党体制下の執行権力二元性の大統領議会制への転化が妨げられた国(193頁)。2021/04/13

Ex libris 毒餃子

20
ウクライナ情勢を受けて読んでみました。旧ソ連の国々の政治体制について論じた本であるが、各国々の前提知識を要求されるレベルであった。どの国も現行政治体制に移るまでの紆余曲折があるが、その過程を生み出した背景と現行体制をよく理解する必要があります。2022/03/21

Porco

17
社会主義体制崩壊後の5カ国の政治史を、大統領と首相、議会の関係からたどります。ややこしいですが、類書はなかなかないと思います。ウクライナの政治がいかに混乱し続けてきたかもわかりました。デモクラシーとガバナンスの問題は奥深すぎる。2022/06/05

ふぁきべ

13
内容的にはタイトルなどから想像するよりもはるかに専門的で、政治学者か東欧の政治学を学んでいる学生でもない限りこの内容をすべて理解して記憶する必要性はないように思う。ただし、取り上げられている五か国の政治・地政学的背景やソ連・共産圏崩壊後のこの五か国の政治の流れを非常に丹念かつ分かりやすく論じているので、この五か国の政治・地政学的な背景などへの理解はかなり深まったと思う。個人的にはポーランドの内容は行き過ぎているほどに詳細なので食傷気味になったが、ほかの四か国については程よい立ち入り方だと感じた。2021/05/02

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