内容説明
母が病で亡くなり、叔母ペイシェンスの住むジャマイカ館に身を寄せることになったメアリー。だが、原野(ムーア)のただ中に立つ館で見たのは、昔の面影もなくやつれ、怯えた叔母と、その夫だという荒くれ者の大男ジョスだった。寂れ果てた館、夜に集まる不審な男たち、不気味な物音、酔っ払っては異様に怖がるジョス。ジャマイカ館で何が起きているのか? メアリーは勇敢にも謎に立ち向かおうとするが……。『レベッカ』「鳥」で知られる名手デュ・モーリアが、生涯の多くの時を過ごしたコーンウォールの原野を舞台に描くサスペンスの名作、新訳で登場!/解説=瀧井朝世
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
104
感想は書かない。冒頭の数頁読んだだけで原野の叙述に痺れた。一気読みしたいけど、叙述自体を楽しむべきと感じ、敢えて1週間を費やして読んだ。美は細部にあり。だからと云って物語性も存分に楽しめる。結末には異論がありえようが、主人公は若い女性なのだから、新たなチャレンジなのかもしれない。お薦め。2021/08/30
藤月はな(灯れ松明の火)
92
本当に『鳥』や『赤い影』、『イソガイ』の作者か?舞台が『嵐が丘』を連想させる荒野で、ゴシック且つピカクレス・ロマンスだからだ。最近、昔の女性作家さんの初期作品や別名義の小説が刊行される度にその幅が広い活動に驚くばかりである。夫、ジャスに抵抗する心を折られ、おどおどと卑屈に振舞う叔母の名前がペイシェント(忍従)とは何て皮肉なんだろう。ジャス達のやっていた事、ジャマイカ館での悪事の黒幕には早くも気づくも無鉄砲で勇猛、そして相反する心で恋するメアリーを思わず、応援してしまう。あの予言がああ、当たるなんて・・・。2021/07/17
さつき
66
母の遺言により、一度しか会ったことのない叔母のもとに身を寄せることになったメアリー。そこは荒野の真っ只中にあるジャマイカ館という宿屋でした。叔母は若い頃の面影もなく虐げられた様子。荒くれ者そのものな叔父にはどんな秘密があるのか?サスペンスとロマンスの兼ね合いが絶妙で楽しく読みました。ヒロインのメアリーが理性的でしっかりした性格なのが頼もしかったです。2025/03/30
星落秋風五丈原
66
映画と異なり原作には、ジョシュアの弟で馬泥棒のジェムと地域で尊敬される牧師フランシスが登場し、メアリーを巡った三角関係になる。ワルだがワイルドな魅力のジェムと、正統派ヒーローのフランシス、更にジョシュアすら、メアリーは最初から彼に反発する異分子で邪魔者だからさっさと放り出せばいいのに彼女に語りかける場面があり、こんな時なのにモテキ到来のヒロインである。とはいえハーレクイン小説のゴールである結婚は、どうやらメアリーの望みではなさそうだ。ワルの魅力に惹かれる自分も自覚している。そんな彼女の最後の選択は? 2021/04/07
Kotaro Nagai
55
創元のデュ・モーリア5冊目。本作は1936年発表の著者の長編4作目。この後に書かれた長編が「レベッカ」です。物語は19世紀前半の英国コンウォール地方、23歳のヒロイン、メアリーが母に死なれ唯一の肉親の叔母を頼って「ジャマイカ館」を訪ねるところから始まります。そこで彼女を待ち受ける恐怖と試練。登場人物の造形が卓越していて、小説の世界に入っていけます。デュ・モーリアにハズレなし。ヒロインのメアリーは19世紀の女性にしては独立心と勇気があり、立ち向かう姿はちょうど「白衣の女」のマリアンのように好感が持てます。2021/08/01
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