内容説明
敗戦の混乱の中で真実を探る男の謎――娼婦が立つ露地裏、常連に支えられた小さなバー。そこに気まぐれに現われる正体不明の男を、常連客は冬の紳士と呼んだ。男は自棄になった若い女性を救い、彼女のヒモを気取る義兄に生きることを教える。実は彼自身、はためには順調にみえる事業や家庭を捨て、自らの第2の人生に挑戦していたのだった。冬の紳士こと尾形祐司の奇矯な行動を通して、敗戦後の日本人の生き方を示唆した記念碑的長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はちこう
2
ここ最近では自分の人生を楽しむことが異端では無くなりつつあるが、この本が著作された戦後間もない頃は病的な考えだったのかもしれない。ただ現代においてもお金優先主義でそれ自体でその人の価値が決まるのは変わらない。頭が一杯になるとその上に成り立つ愛、例えば、夫婦や親子関係なども真の愛とは言えずお金に縛られる関係になりお金の奴隷になりはて誠の幸福などのぞみ得ないのだ。と主人公の冬の紳士である尾形祐司は言っているのだろろうか。2020/01/18
Prof.Butterfly
2
戦後間もない時代、この「冬の紳士」のようなリベラルな考えの持ち主はさぞ少なかったのではなかろうか。良家に育ち馬車馬のように働いた人生に疑問を抱き、ひっそりと、しかし自らに正直に生きんとする紳士の姿はダンディズムの体現である。2013/09/06
藍兒堂
0
★★★