内容説明
生きているっていったいどういうことだろう?ノーベル生理学・医学賞を受賞した生物学者ポール・ナースが「生命とは何か?」という大いなる謎に迫る。「細胞」「遺伝子」「自然淘汰による進化」「化学としての生命」「情報としての生命」の生物学の5つの重要な考え方をとりあげながら、生命の仕組みをやさしく解き明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひろき@巨人の肩
133
ノーベル賞遺伝学者ポール・ナースの著するライフサイエンスの教科書。「生命とは何か?」を細胞・遺伝子・自然淘汰・化学・情報の観点から平易にまとめて、「世界はどう変わるか?」を自然への畏敬の念のもと希望をもって語る名著。生命とは①自然淘汰により進化する能力があり、②生命体が物理的な境界をもつ、③化学的、物理的、情報的な機械である、と定義する。細胞は「ウェットウェア」であり、人間は並外れた脳を獲得した。われわれ生命が誕生した「物語のはじまり」は1回だけ。地球と調和しながら進化するために生命の起源を探求すべき。2021/12/13
ばたやん@かみがた
113
最初、一般人向けの解説を行うのならもっとイラストや図表を入れれば良いのにと思った。しかし、読み初めて直ぐ愚かな感想だったことに気付く─そういうモノを載せてしまうと更に余計な解説が必要になる。本書は、「生命とは何か」と言う問いに端的に答えることを目指し、またその為の最低限の道具立て(細胞、遺伝子、進化、化学、情報)を示す為のエッセイなのであると─読者は、そこで著者の研究者としての人生の一端を覗き、科学が人々の暮らしや社会のあり方を改善していくことの信頼の篤さに絆されていくのだ。(1/3)2021/08/31
アキ
95
著者は細胞周期に欠損をもつ酵母変異株の分離によりcdc2遺伝子を発見し、その遺伝子がヒトでも細胞周期の制御因子であることを証明し、2001年ノーベル医学生理学賞を受賞した。生命はたったひとつのストーリーから成っていると結論に至る様が興味深い。1細胞2遺伝子3自然淘汰による進化4化学としての生命5情報としての生命の観点から生命を捉え、生命とは1自然淘汰を通じて進化する能力、2生命体が「境界」を持つ、物理的な存在であること、3生き物は化学的、物理的、情報的な機械、の3つの原理が合わさったものと結論づけている。2021/07/17
夜長月🌙新潮部♪
73
作品名はシュレディンガーの著書「What is life?」へのオマージュです。生命とは何かという根元的な疑問にわかりやすくステップを踏んで答えています。まず生命の基本単位である細胞を解説し、次に生命たる由縁につながる遺伝子について。さらに進化から細胞内で起こる化学反応こそが生命活動であること。最後に生体内の情報伝達によるホメオスタシスや遺伝子情報について解説しています。巨大化学プラントをはるかに越える体の中で起きている化学反応や無口な細胞たちの情報社会はおもしろい視点でした。2021/03/31
Tenouji
62
懐かしくて一気読み。大学生時代にむさぼり読んだ分子生物学関係の内容がバランスよく配置、解説されている。そう生命科学を考えるうえで必要な現時点での知見がコンパクトにまとまっている。最大の問いである「生命とは何か」については、無難なまとめではあったけど、DNAが長期に情報を記録する高信頼性の仕組み、と書いてあって、少しハッとしたw。2021/05/28