内容説明
〈あの時に感じたこと〉が本物なのだ。記憶を、感覚を、薄れさせてはいけない。
東日本大震災発生後間もなく、自ら車を駆って被災した各地をめぐり、見て、語らい、思考した、唯一無二のリポート。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
68
この言葉が当てはまるかどうかはわからないけど…私たちは、5年前をちゃんと心に留めて、不幸な目にあった方々の苦労を無にしないようにちゃんと立ち上がっただろうか。自然に抗う事は難しい。でも人間が作ったもので未来の子供達から預かっている今の日本や地球をダメにして良いのか?お役所に任せるだけでいいのか?そう問いかけられたような一冊である気がする。便利は幸せとは繋がらない。まだまだ、元の暮らしには戻れずご苦労を重ねている方もいる。涙を心にしまって、歩みだしている人もいる。そう。みんなで支えあって歩き出さなきゃ。2016/04/10
えんちゃん
62
タイトルと読友さんのレビューに惹かれ。著者が被災地を歩き考え、様々な観点から震災を丁寧に丁寧に綴ったリポート。人間の感情に自然は一切関与しない、という一文が胸を突く。地震・津波・火山に何度も何度も打ちのめされてきた歴史。それが日本に住むということ。無常な自然との対峙。無常という思想の起こり。TVニュースでは得られない震災の記録と記憶。とても深い内容だった。2021/06/14
HANA
61
東日本大震災からあと一か月で五年。にもかかわらず何故だか自身の一報を聞いた時の事は今でもはっきりと思い出せる。五年間で様々な事が変わったけどあの日の事を思い出すたびに、何となく重い石を飲み込んだ様な心持にされる。おそらく人にはそれを経験したら以前の自分に戻れないという出来事があり、日本人にとってはそれがあの日だったのではないかと思う。内容は震災を巡ってのエッセイなのだが、全体的に文章をまとめる以前の思考の塊をいくつも並べているような印象もあり、あの日以来のあらゆる混乱を何となく彷彿とさせるようだった。2016/02/11
ゆうゆうpanda
46
人はどこまで他人の境遇に沿うことができるか。6年前の今日、映されなかっただけで、確かにそこにあった遺体。命があっただけでも有り難いと粛々と運命を受け入れていた被災者の方々。東北の人々は我慢強いと感心した私は、東北の~と付けることによって巧妙に距離をとろうとしていたのかも。自分を安全な場所におきながらの同情。偽善と言われても反論できない煩悶に今もまだ悩まされる。原発問題や行政について積極的な意見を言う勇気もなく。悲しい歌枕の地がまた増えてしまった東北。前向きな句で上書きしてあげることくらいしか思い付かない。2017/03/11
Shoji
42
池澤夏樹さんが東日本大震災から5ヶ月の間、現地を訪れて見聞きし考えたことをまとめた本。阪神淡路大震災と東日本大震災、そしてコロナ禍。確実に人々の価値観は変わったと思う。多くの犠牲者を出し、今もなお苦しんでおられる方が多数いらっしゃる。私は「あの日あの時」を決して忘れないでいようと改めて思った。2021/06/06