内容説明
占有、譲渡担保、時効、表見代理、所有権、契約。基本書を開けばどれも当たり前に出てくる民法の用語たち。だが現代日本の民事事件とがっぷり四つに組んだ本書を読んだら最後、そこにはこれまでとは違った世界が広がり、根本的な問題が浮かび上がっているはずだ。有名判例を一つ一つ、事案の細部にわたって笑いとともに解きほぐす!
目次
はしがき
1 占有――意外な出発点
2 時効制度は自由の砦
3 金銭債権の恐怖――法の母
4 相続財産の占有――飛ぶならここから
5 契約は天上階で
6 委任・組合は天上創出のマジック
7 所有権――ご注意ください、ここで曲がりまーす
8 請負――ご当地名物、丼勘定はこちら
9 賃貸借は怪人二面相
10 契約責任――淡きこと水の如し、とはいえ
11 不法行為――空があんなに青いのも、電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、みんなあたしが悪いのよ
12 転用物訴権――中途半端もきわめれば
13 担保権者の占有――自業自得とはこのことさ
14 金銭債務の整理――不信と信用収縮の底なし沼
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Haruka Fukuhara
5
公法篇でもよく言及される。民法が法学の基礎だとはよく言われることだが、このシリーズ2冊を読んでいて改めてその意味に触れた気がする。正直、私法領域自体には理論的に全く興味をひかれない。適当に解決されていれば理論はどうでもいいと思ってしまう。。2017/06/02
モッチー
2
本書の要点は、同著者による『ローマ法案内』『現代日本法へのカタバシス』などの著作と重なる部分も大きい。他の著作にない本書の特長としては、民法の有名判例を主な素材にしている点で、日頃から判例学習に勤しんでいる法学徒が理解しやすい内容になっているというところではなかろうか。本書は東大ロースクールでの授業を再現したものだそうだが、ロースクールでは公法・刑事法編の授業もあるようなので、そちらの授業の再現もぜひ読んでみたい。2015/12/29
pb_lack
2
民集の事例を「事実認定」の視点でとにかく細かく見る。そこにあらわれる事実と下された判断を「占有」と「bona fides」の観点から解き明かす。ローマ法本来の意味と構造からして日本法(に限らないが)がいかに暴力的な変遷や解釈をされてきたか、という意味で「基礎を問う」にふさわしい。読み終わると「これまで法律を勉強してました」とは言い難くなることうけあい。読むべき。木庭先生をマスターとしたTRPGリプレイを読んでいるように楽しめる。しかしこれが成り立つのが東大ローらしさ、というのはきっとある。2015/03/07
inu
1
一応一通り目を通しました。が...2020/06/11
TM
1
木庭先生のローマ法理解の視点から,現代日本の民事判例を読み解いていく本。「笑う」とあるが,特に笑える内容ではない。非常に難解で,先生の占有に関する理解や,bona fidesの理解を把握できないと,何を言っているのか分からない。深く理解できれば,事案へのアプローチの新しい視点が手に入りそうな気がするが,如何せんこの本だけでは難しそう。個人的には,1階とか2階とか,市民的占有とか,うまくイメージすることができないので,全体の2割程度も理解できていない。ただ,判例の事実関係を読み解くという意味では有意義かも。2020/03/07