内容説明
多文化社会・イギリスでの移民の聞き取り調査を元に、教育施策のあり方を検討するとともに、日本の学校における市民権教育の動向や、地域社会の各機関が有機的に連携した取組みを紹介する。最近、日本語指導が特別の教育課程に位置づけられたが、近年の文部科学省の外国人児童生徒施策にも注目し、多文化教育の課題と可能性を論じる。
目次
はじめに
第I部 イギリス型多文化政策の現在
第一章 イギリスの人の移動と多文化教育の展開──日本の教育との関連で
1 はじめに
2 教育にみるイギリスの内なる分権の姿
3 センサス調査項目にみるイギリス型多文化の現実
4 象徴化された労働にみる戦前・戦中の人の移動
5 戦後の公教育の変化──内なる多文化から外からの多文化への対応
6 日本社会の対応─特別な教育課程としての日本語指導
第二章 イギリスのアジア系イスラーム女子中等学校の生徒と成人の生活実態──ロンドンのタワー・ハムレッツとコヴェントリを中心に
1 はじめに
2 近年のタワー・ハムレッツ
3 マルベリー女子中等学校の現状
4 生徒の調査結果
5 成人の調査が語るもの
6 調査から得られた女子中等生と成人の動向
第三章 グローバル時代における政治と宗教──イギリスを中心に
1 はじめに
2 イギリスのグローバル化の歴史──第二次世界大戦前後から
3 「暴動」の変遷にみる政治と教育──人種から宗教一般を経てイスラームへ
4 グローバル化による新たな「統合」問題──教育施策との関連で
第II部 市民並びに市民社会の成熟と多文化共生
第四章 日本における外国人と市民性教育の課題──市民観念の欠如と教科書
1 はじめに
2 日本の外国人の歴史と近年の特徴
3 人間や市民としてよりも「国籍」重視の日本──オールドカマー排除の軌跡
4 「市民」とは何か
5 日本の教科書にみる市民性教育の課題
6 グローバル化のもとで日本が世界化する自覚を
第五章 多文化からなる自国の文化──多文化共生のアポリア
1 はじめに
2 社会的行為を拘束するものとしての習俗
3 現代法にも生きる習俗
4 文化の核としての習俗
5 今に生きる武士道
6 宗教にみる東アジアのなかの日本
7 イスラームと日本
8 食事文化と日本
9 収斂する宗教
10 まとめにかえて
第六章 外国人住民に対する教育支援
1 はじめに
2 国の変化
3 先進的な自治体の対応
4 おわりに
第七章 日の丸・君が代問題をめぐって──主役不在の議論
1 はじめに
2 主役不在の対論
3 「多文化」化、多民族化している学校
4 あるキリスト教徒の悩み
5 国際儀礼で逃げ通せるか
6 定年後の活動をも縛る踏み絵
7 その後の教育委員会
第八章 世界人権宣言に対するピアジェの貢献──外国人の教育に関し何を学ぶか
1 はじめに
2 教育に関する決議二六条の内容と社会の義務
3 基礎教育無償化の意味と選抜、進路選択の多様化
4 子の教育選択権を親にゆだねる意味
5 道徳教育の中心的課題
6 国際教育と世界平和実現に向けた教育改革
7 むすびにかえて
第III部 近年の外国人児童生徒施策に関する文部科学省の動き
第九章 日本語指導の「特別の教育課程への位置づけ」をめぐって
1 はじめに
2 問題の背景
3 「検討会議」がもたれるまでの経過
4 なぜ特別の教育課程が注目されたのか
5 関連する学校教育法施行規則の先例
6 省令改正の内容
7 日本語指導を教育課程に位置づける利点と課題
ほか